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前川國男設計 打ち込みタイルとコンクリートの共鳴が美しい埼玉会館 〈名建築の名階段 vol.36〉


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埼玉県にある埼玉会館は、JR浦和駅から徒歩で5分ほどの場所にある文化施設です。この埼玉会館は、あの前川國男が設計しており、以前から行きたいと思いつつなかなか訪問が実現しなかった場所の一つです。

今回、立原道造のヒアシンスハウスの訪問と合わせてようやく行くことができました。

訪問してからちょっと時間が経過してしまいましたが、記憶を呼び覚ましながらレポートします。

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前川國男

1905年(1986年没)新潟県生まれ東京育ちの建築家です。

ル・コルビュジエやアントニン・レーモンドの設計事務所で経験を積み、モダニズム建築の第一人者として日本の建築界を牽引した前川國男。

前川國男が独立後に主宰した前川國男建築設計事務所出身者にはあの丹下健三もいるくらいです。

このブログでも記事している上野の東京都美術館東京文化会館京都のロームシアターなど数多くの建築を手掛けています。

埼玉会館は、1966年に竣工しました。前川國男61歳の時の仕事です。

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埼玉会館

前川國男設計の現在の埼玉会館の建築は2代目で、初代の埼玉会館の建築は渋沢栄一の寄付により、岡田信一郎の設計で1926年に開館しました。

なんと、当時はこのような公共の集会施設は珍しく、東日本では日本青年館(1925年)に次ぎ、日比谷公会堂(1929年)よりも先に開館しています。

初代の埼玉会館は貸館でしたが、前川國男設計の現在の埼玉会館になってからは現在のように主催事業も手がけるようになりました。

建築としては、2018年にDOCOMOMO Japanに選定されました。

また、国際文化会館などと共に重要な前川國男建築として国の登録有形文化の指定を目指しています。

埼玉会館の打ち込みタイルとコンクリート

前川國男といえば打ち込みタイルです。上野の東京都美術館も外壁全面に打ち込みタイルが使われています。この前川國男の代名詞のようになっている打ち込みタイルが外壁全面に使用されたのは、ここ埼玉会館が最初です。

そういう意味でここは前川國男の打ち込みタイル工法第一号なのです。

それでは、美しい打ち込みタイルを見ていきましょう。

▲バルコニーはコンクリート、それ以外の外観は微妙に色味の異なる美しい打ち込みタイルです。

大胆に迫り出したコンクリートの荒々しさとカーブを描く柔らかな印象のタイルのコントラストがなんとも美しい。

▲打ち込みタイル工法ならではの穴です。

▲そここで見られるコンクリートと打ち込みタイルのハーモニー。そこへ地面の2色のタイルの張り分けがアクセントとなっています。

▲今でも当日券売り場の窓口として機能しているようです。小窓がかわいい。地面のタイルの張り分けもいい感じです。

▲打ち込みタイルと同じところで焼いたのでしょう。ちょっと釉薬が違うのかな?プランターの装飾はタイルよりも艶やかですね。

サボテンがとっても似合っています。

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埼玉会館の内観

訪れた日は、何かイベントを開催しており、その受付の場所として使われいたため、エントランスを歩き回ったり、まじまじと観察することができなかったのが残念です。

しかし、活気が溢れ人々で賑わう様子が見られたので、今でも現役で市民に使われているという事実を目の当たりにすることができたのはよかったです。

▲内部の床も外部同様に2色のタイルが貼り分けられています。白い柱には木の柱巻きが施され、天井との接続部は美しい流線形の彫刻のような仕上がりで華やかな印象です。

あまり見えないのですが、照明がエレガントで美しいデザインでした。

OR

▲スロープの先は、前川カラーな塗装になっています。この紫と赤の組み合わせは上手くやらないと下品になりかねませんが、しっとりとおさまっています。

さらに壁のコンクリートのマチエールの無骨さに対して柱の流線形のエレガントさがうまく調和していて、ル・コルビュジエの影響をそこはかなとなく感じますね。

▲柱の木を踏襲したカウンターのデザイン

▲おそらくこのカーブは、天童木工の仕事でしょう。いや絶対にそうに違いないです。

イスのデザインもカラーリングも本当にかわいい。

▲このトップライトのデザインも温かみがあって素敵です。

このような有機的なデザインがこの会館に親しみやすい印象を与えているのではないでしょうか。

このトップライトの上部(屋外部分)は下記に写真を掲載しました。

▲なんてかわいいダストボックス!これもなの?!これも前川國男なんでしょうか。

埼玉会館のパンフレットによるとそのようです。藤の部分はきっと作り替えているんでしょうね。

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埼玉会館のアール

見ていて飽きない前川國男建築ですが、埼玉会館のあちらこちらに施されたアール(カーブ)を見ていきましょう。

▲バルコニーもそうでしたが、エントランスの庇もコンクリートがアールを描いています。

▲こちらがトップライトの屋外部分です。花壇の中にあるのですが、その花壇もアールを描いて盛り上がっています。

▲埼玉会館には、2つのエスプラナードと呼ばれる公開広場があります。誰でも訪れて一息ついたりすることができる場所です。

そのエスプラナードにあるプランター横のベンチも焼き物です。いい感じの色味です。思わず座りたくなる。

ここの地面のタイルの張りわけはかなり工夫されているようなのですが、上から俯瞰で見ないとその凄さがあまりわかりません。

▲打ち込みタイルのエッジは鋭利ではなく、優しいカーブを描いています。このような優しいディテールがこの埼玉会館の全体の印象を柔らかいものにしていると感じました。

公立の集会施設を威厳バリバリの建築にするのではなく、エスプラナードを設けたり、エッジを丸く優しく仕上げたり、ベンチやプランターに至るまで、壁面と同様の焼き物で仕上げたりすることで、温かみと親しみやすさを演出しています。

これら細やかなデザインが今でも市民の支持を得つづけている所以なのでしょう。

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埼玉県の建築

基本情報

埼玉会館

さいたま市浦和区高砂3-1-4 MAP

アクセス:JR浦和駅(西口)下車徒歩約6分

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