京王線の唐木田駅から徒歩20分ほどの場所にある高橋 靗一(たかはしていいち)が主宰する第一工房設計の株式会社全労災システムズ(こくみん共済 coop 情報センター/旧全労災情報センター)をご存知でしょうか。
ここはまさに名建築の名階段で、階段が主役の建築です。
階段があるからこその建築、建築の主役は階段という階段好きには夢のような場所です。
高橋靗一(第一工房)
第一工房を主宰していた建築家高橋靗一(たかはしていいち)は、逓信省営繕課勤務ののち、独立して自身の設計事務所第一工房を設立しました。
手がけた建築は今回紹介する全労済システムズからも近い、南大沢にある東京都立大学南大沢キャンパスや、2017年に妹島和世がアートサイエンス学科の新校舎を手がけたことでも話題になった大阪芸術大学など大規模な大学の建築を手がけています。
また、私も何度か訪れている気持ちのよい美術館、群馬県立館林美術館も高橋靗一の仕事です。
階段が主役の建築
株式会社全労災システムズ(こくみん共済 coop 情報センター/旧全労災情報センター)は、1995年竣工の建築です。
まずは、株式会社全労済システムズ(こくみん共済 coop 情報センター/旧全労災情報センター)の階段が主役の素晴らしい建築を見ていただきましょう。

▲手すり下にリフレクションして分身の術になっています。これが階段の上部から下段を見た図です。整然と並ぶコンクリートの柱とその先に切り取られた新緑、リフレクションで3人になった人物。もう完璧です。

▲こちらは階段下部から上段を見上げた図です。通常階段ってえーー階段?エスカレータどこーってなりがちですが、ここは、「上ります!上ります!ぜひ、のぼらせてください!」という気持ちにさせてくれる、とっても天井が高くて気持ちのよい空間。
柱ごしに光が入り込み、柱の影が美しいストライプ模様を見せてくれます。ああうっとりです。
簡単にいうと、こんなに立派な階段がなくても建物への導入はできたはずですが、わざわざここに「どうだー!」と言わんばかりの堂々たる階段を設置したのは、一段一段踏みしめて目的の入り口へ向かう劇的なシチュエーションを作りたかったからでしょう。
いろんな角度から見てみよう大
この素晴らしい階段スペースをさまざまな角度から見てみたいと思います。

▲こちらは上段側から階段の側面を見たところ。どれだけ天井の高い空間なのかわかります。
階段スペースには屋外と仕切る壁はないので、半屋外のスペースなのです。

▲こちらは上の写真と逆側の側面を階段の下部から見たのです。階段横にはスロープがちゃんとありました。車椅子でも大丈夫です。
半屋外(半屋内とも言える)だというのがこちらの写真の方がわかりやすいかもしれません。

▲通りの反対側からひいて見るとこんな感じです。右側の巨大な建築ももちろん高橋靗一設計の社屋です。木で見えませんが、階段スペースの先にある空間とつながっています。
ちなみに階段横のステンレスのアートは小林泰彦の「宙(おおぞら)」1988年です。
実はカフェテリアだった
この階段の先の空間には実はカフェテリアがありました。社員はもちろん、近隣及び一般の人も利用できるカフェテリアだったのですが、コロナの影響もあってか、現在は閉店しています。

▲社屋部分はとんでもなく大規模な建築です。

▲この写真の2階部分、ガラスがはまっているところがカフェテリアでした。あぁ、ここに入ってコーヒータイムとかしてみたかったなぁ。

▲こちらは、レインボープラザという階段から上がっていて左側にあるスペース。こちらには螺旋階段ではなく緩いカーブを描くスロープがありました。
ここを訪問したのが週末だったため、全労済システムズの会社も休みだし、この施設の全てが閉まっていました。
このレインボースペースという場所が平日だったら一般にも開かれているのかどうかは不明です。
カフェテリアがまだ営業している時も平日のみの営業で、営業時間も普通のカフェに比べるとかなり短時間だったようですので、ここが入れる時間があったとしてもかなり限定的な気がします。
都内からですと、気軽に訪れることのできるような距離感ではありませんでしたが、行ってよかったです。
階段下にこっそりと置き去り(しまわれたまま?)にされていたカフェテリアの「営業中」の看板が悲しかった。
カフェテリアの営業再開しないかなぁ。
基本情報
全労済システムズ(こくみん共済 coop 情報センター/旧全労災情報センター)
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