佐藤雅晴
2019年に45歳の若さでこの世を去ったアーティスト佐藤雅晴さんの展覧会が六本木蔦屋書店の2階のBOOK GALLERYにてスタートしました。近所なので早速初日に行ってきました。
この会場は蔦屋書店の2階のエスカレーターを上がって右側にあるスペースです。エスカレータを登って正面の壁面に展覧会サインとその時開催している展覧会の展示スペースがあるのですが、そこがまさにエスカレーターを永遠に登り続ける女性の後ろ姿の映像作品です。のっけから佐藤雅晴さんの世界観に引きずりこまれるような感覚に陥ります。
「エスカレーターガール」2010年、アニメーション、 シングルチャンネル・ビデオ(HD、カラー、サイレント) 、ループ▼
展示スペースは右奥です。▼
佐藤さんの作品は今年閉館になった原美術館の最後の展覧会「光―呼吸 時をすくう5人」にも展示されました。
佐藤雅晴さんのプロフィールパネルです。▼
「Hands」
展示作品は2017年制作の「Hands」のシリーズです。このシリーズは、猫をなでる手、入れ歯を洗う手、恋人にふれる手、ページをめくる手、おもちゃで遊ぶ子供の手など、33の「手」のシーンを描いた映像作品です。それらの映像作品がギャラリーの9つのモニターに映し出されます。
「Hands」2017年、アニメーション、33チャンネル・ビデオ(HD、カラー、サウンド) 、ループ▼
実写とアニメーション
入れ歯を洗う手、猫を撫でる手。この二つのモニターはずっとこの二つの手を流し続けています。佐藤さんの作品は全てパソコンソフトのペンツールを用いて実写をトレースしたアニメーション作品です。しかし、その背景は実写のままなので、映像をみていると現実と虚構が綯交ぜになった不思議な世界に引き込まれます。▼
正面の3つのモニターと左の3つのモニターは、各々いくつかの手がループで順番に流れます。今回この展示スペースに合わせて再構成した作品ということなので、おそらくモニターごとの映像の組み合わせについて再構成されたのだと思います。▼
左に見える作品は平面作品です。今回の展覧会で唯一の映像ではない作品です。
平面作品
映像ではありませんが、この作品のテーマも「Hands」です。約8年に及ぶ闘病生活の中で死と向き合いながら、作品制作を続けた佐藤さんの作品はどれも胸を打ちます。
特にこの作品は、一見すると物悲しい空気が流れているのですが、その根底には人間の営みや生命の尊さを敬う気持ちが流れているように感じます。寂寥感が漂うのですが、どこか救いのある光景なのです。▼
「尾行」
美術出版社より和・英併訳のレゾネ「佐藤雅晴 尾行—存在の不在/不在の存在」(2,970円税込)が5月19日に刊行されました。▼
今回の展示作品「Hands」の清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2017に出品した際の展示風景が掲載されています。▼
会期が長いので是非立ち寄って佐藤さんの世界を堪能してください。
佐藤雅晴 作品展「Hands—もうひとつの視点から」/ SATO Masaharu exhibition: Hands—from another perspective
2021.6/21ー8/29 11:00-20:00
六本木蔦屋書店 2F BOOK GALLERY