練馬区立向山庭園(こうやまていえん)は2020年に惜しまれつつ94年間の営業に幕を下ろした豊島園の跡地に新たにできた練馬城址公園と隣接する場所にあります。
向山庭園には土地の高低差を活かした池泉回遊式の日本庭園があり、その庭園の中心の池には茶室が浮かぶようにして建てられています。
そしてここは、練馬区唯一の和風の区立施設です。

簡単に言うと和風の集会所なのですが、なんと設計は内藤廣(ないとう・ひろし)なんです。
内藤廣と言えば東京だけでなく京都や御殿場の虎屋(とらや)や、機能のない建築紀尾井清堂などを手掛け、さらに現在は多摩美術大学の学長までされている日本を代表する建築家の1人です。

向山庭園はいつできたの?
庭園として開園したのは1980年で今から43年前になります。向山庭園が開園した時から隣には豊島園がありました。
豊島園だった場所は現在、練馬城址公園となり、一部はハリーポッターなどのアトラクションが楽しめるワーナー・ブラザーススタジオツアー東京になっています。
内藤廣が手がけた現在の建築、集会施設の母屋と茶室は2013年に竣工しました。

向山庭園は誰が作った?
1980年に開園した向山庭園ですが、1980年より前はなんだったのでしょうか。
歴史を遡るとこの周辺は、1920年代に宅地化が始まり、一時期は第8代鉄道大臣江木翼の邸宅だったこともあります。

その後1976年にマンションを建てるために不動産会社が用地買収したのですが住民による反対運動が起こり、その結果練馬区が土地を購入します。そして、練馬区立向山庭園として1980年に開園に至るのです。
ですから、最初から練馬区の土地だったわけではなく、こうした経緯があって1976年に練馬区のものとなった場所なのです。

向山庭園の茶室
庭の中心にある瓢箪型の池の上に半分突き出すような形で建設された茶室と水屋は、予約をすれば借りることができます。私が訪問した際には、着物の方々が出入りされていたので、お茶会が開催されていたようです。

もちろんこの茶室の設計も内藤廣によるもの。

池を眺めながら、お茶会を催すことができます。
しかもこんなに素敵な空間を安価で借りられるのですから、お茶を嗜む方には嬉しいですね。

高低差のある庭園なので、茶室は母屋にとっては地下と同じレベルです。
豊島園駅から向かうと1階レベルにある正門は裏側に当たるので、低い方の茶室横から庭園へ入ってくることになります。
向山庭園の母屋
庭園の高台に建てられているのが母屋です。母屋の設計も内藤廣です。

母屋は、池のある庭園と同じレベルの地下1階と正門と同じレベルの地上1階という構成で、事務室の他に貸し出し用の多目的室と3つの和室があります。

母屋のロビーやトイレは出入り可能ですが、それ以外の多目的室や和室は、予約をして借りた人しか出入りできません。
シックで落ち着いた和室であることが外から見える雰囲気で伝わってきました。しかし中に入ることはできません。

杉板型枠コンクリートのマチエールがなんとも美しい地下の階段空間ですが、この階段非常時用で通行することができませんでした。
残念!

一般の人が出入りできるのはこのロビー空間のみです。
コンクリートと木のハーモーニーが、モダンな和空間を演出します。

訪問時は静かでしたが、区立の集会施設なので、何か催しなどを開催しているときは、人々で賑わう場所なのでしょう。
向山庭園はどこにある?
西武豊島線の豊島園駅と都営大江戸線の豊島園駅から徒歩でアクセスできます。旧豊島園、現在の練馬城址公園と道を挟んで隣接していて、アクセス便利な場所にあります。
駅から向かうと今話題のワーナー・ブラザーススタジオツアー東京とは石神井川を挟んで反対側に位置しています。

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基本情報
練馬区立向山庭園
庭園は入場無料 練馬区向山3丁目1−21MAP アクセス:西武豊島線豊島園駅徒歩3分、都営大江戸線豊島園駅A2出口徒歩5分 |