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復興の象徴 陸前高田の「奇跡の一本松の根」展 鑑賞に 内藤廣設計 目的も機能もない紀尾井清堂を再訪


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東日本大震災の津波で唯一流されなかった松の大木で震災復興の希望の象徴として「奇跡の一本松」と呼ばれた陸前高田市の「奇跡の一本松の根」展を見に、内藤廣設計で目的も機能もないまるで”現代のパンテオン”のような倫理研究所の紀尾井清堂を再訪してきました。(会期終了)

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紀尾井清堂再び

施主である倫理研究所から「思ったように造ってください。機能はそれにあわせてあとから考えますから」という異例の依頼によって設計された紀尾井清堂を再訪してきました。

前回の訪問は、内藤廣建築設計事務所主催で開催された予約制の建築見学会でしたが、今回は内藤廣建築設計事務所と倫理研究所の共催の展覧会です。

前回の建築見学が2021年12月でしたから、こんなにすぐに再訪できるとは思っていなかったので、喜び勇んで出かけてきました。

紀尾井清堂の建築見学会の様子はこちらを参照ください。▼

内藤廣設計 目的も機能もない用途未定の建築 “現代のパンテオン 紀尾井清堂の建築見学会へ

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”奇跡の一本松”の根

今回紀尾井清堂の1階に展示されているのは、陸前高田市に保存されていた奇跡の一本松の根です。

奇跡の一本松とは

簡単に根の方じゃなくて”奇跡の一本松”とは何かというと、かつて陸前高田の広田湾に面した高田松原には7万本の松がありましたが、東日本大震災の津波により流されてしまいました。けれども、津波の脅威に耐えたった一本だけ残された松の木がありました。

枯れた松を再生

やがてそれは「奇跡の一本松」呼ばれ震災復興の希望の象徴とされました。しかし津波の海水によって枯死(枯れている)していることが判明し、陸前高田市はモニュメントとして残すことを決定しました。

木は伐採され様々な保存作業を経て、現在は元の場所に再び立てられています。この作業には多額の経費がかかり、全て寄付によって賄われました。当時は、防腐処理をされ人工的に再現された木であることからサイボーグなどと揶揄する声もありました。

また、一本松の木片からはバイオリンが製作され、その「TSUNAMI VIOLIN」をリレー演奏するチャリティコンサートが行われたりもしています。

樹齢173年の巨大な根

今回展示されているのは、木を伐採した後に抜根された根の部分です。根は深さが1.6m、幹を中心に直径13mもあり、強大であったから津波に耐えることができたわけです。樹齢173年、その重さは2tもありました。現在は、幹と同様に保存処理されたものを見ることができます。

詳細は動画を参照ください。▼

虹と出会えるか

今回再訪して驚いたのは、前回よりも更にはっきりしっかりと紀尾井清堂にガラスのプリズムによる虹が出ていたことです。それは、壁や床を伝い、一本松の根の中央をまたがり、まるで演出かのような素晴らしい虹が出ていてとても美しい光景でした。

このような意図的に狙ったわけではない美しい光景に出会うことを建築見学会の時に内藤事務所の方は「建築の神様からのプレゼント」と表現していました。

東京都庭園美術館の新館の通路のガラス壁の影がハートになるのも同じプレゼントですね。

紀尾井清堂で虹に出会えるかどうかは、その日の天候と季節によりますので、運に任せるしかありません。私が訪問したのは3月中旬の13時30分から14時40分までですが、帰り頃にはすっかり虹は消えていたので、14時前が確実だと思います。12月の見学会の時も13時頃の訪問でした。更に陽が低い季節限定だと思われます。

ですから、虹と一本松の根の出会いもある意味奇跡です。

このような意図していなかた現象が見られる建築の特集はこちらから▼

意図していなかった美しい現象「建築の神様からの贈り物」特集

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何が見られるか

一本松の根

「奇跡の一本松の根」展では具体的に何が見られるかというと、保存処理された根は、中心部分だけ数回展示されましたが、その後ずっと倉庫で保管されていました。

2019年に開園した陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園国営追悼祈念施設の設計を内藤廣が手がけた縁で、陸前高田市協力のもと今回の「奇跡の一本松の根」が公開されました。

一本松の根そのもののその迫力は、初訪問で圧倒された紀尾井清堂の空間を凌駕する勢いの存在感で、過去の記憶となりつつある大震災を改めて考える機会になりました。

ドキュメンタリー映像

紀尾井清堂の2階では、NHK「奇跡の一本松を追って」のドキュメンタリー映像がループで流れています。35分の番組です。

1階には映像観賞用に椅子が設置されています。▼

機能のない建築

あとは、やはり何度来ても圧倒される紀尾井清堂の空間そのものを、再度堪能しました。見学時間は70分の制限があります。映像が34分なので40分近くは根と共に空間を鑑賞することが可能となります。

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建築見学会との違い

2回目の訪問だったので、最初の建築見学会との違いをレポートします。建築見学会では、内藤事務所のスタッフによる解説が最初にありましたが、今回は建築についても一本松についても特に解説等々はありません。

紀尾井清堂の模型と図面は1階に展示されています。1階で受付を済ませたら自由に見学するスタイルです。

外階段には出れられない

紀尾井清堂の象徴とも言える、ガラスとコンクリート壁の間にあるのあの外階段へ出ることはできません。扉は閉まっており、外からあるいは中の窓越しに眺めるだけです。

トップライトの開閉は見られない

天井部にあるトップライトは実は開閉できるので、建築の見学会では開閉の様子を見ることができましたが、今回は開いたままで、開閉はしません。2階で映像の放映をしていますから当然ですね。

トップライトの開閉の様子や外階段は動画を参照ください。▼

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見学の注意点

事前予約制

この展覧会は、入場無料ですが、事前予約制です。必ず予約をしてから訪問しましょう。

開館日は火木土の曜日限定です。各回70分で入れ替え制です。

撮影について

館内の撮影は写真も動画も可能ですが、2階で放映しているNHKの映像は撮影不可です。また、三脚等の使用もできません。

靴と荷物

建築見学会では、2階の入り口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えましたが、今回2階は土足で上がることができました。しかし、3階以上へは階段前で靴を脱いで、そのまま上がることになっていましたので靴下を履いて行った方がいいかもしれません。

HPには高いヒールでは入館できないと書かれていましたが、配布されたリーフレットには、建物を著しく傷つける恐れのあるお履き物はスリッパへの履き替えに協力ください。と書いてありました。フローリングにピンヒールは大敵ですから、普通の靴で出かけましょう。

また、スーツケースなどの大きな荷物は持ち込みできないし、預かりもしてないので、駅のコインロッカーなどに預けてから向かいましょう。

無料配布のリーフレット▼

会期が2023年2月(予定)まであるので建築目的でも、奇跡の一本松の根目的でも、その両方が目的なら尚更、予約して訪れてみてはいかがでしょうか。このブログがその際の参考になると嬉しいです。

「奇跡の一本松の根」展は2023年3月9日で終了しました。延長はありません。

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展覧会基本情報

「奇跡の一本松の根」展

2022年3月11日~2023年2月9日  3月9日←会期延長しました

火・木・土開館 10:00~ 16:10(入替制:各回70分) 

入場無料 事前予約制

倫理研究所 紀尾井清堂

東京都千代田区紀尾井町3-1 MAP

アクセス:JR四ツ谷駅(麹町口)より徒歩10分、地下鉄麹町駅(2番出口)より徒歩5分、地下鉄赤坂見附駅(D出口)・永田町駅(7番出口)より徒歩6分

紀尾井清堂のすぐ近くの建築情報▼

村野藤吾建築特集 紀尾井町の3つの村野建築とモザイクが魅力的な2つの村野建築

内藤廣の建築記事▼

益子の旅その3:建築旅 フォレストイン益子、道の駅ましこ

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