2020年7月に日本橋浜町に、築122年の蔵を再利用したニューバランスの新たなコンセプトストア「T-HOUSE New Balance」がオープンしました。ニューバランス愛用者ではありますが、今回は建築目的で遅ればせながらようやく訪問してきました。
T HOUSE New Balance
この革新的なコンセプトストアのディレクションは、クリエイティブチームTOKYO DESIGN STUDIO New Balanceが担当しています。意匠監修と内装設計を手掛けたのはスキーマ建築計画を主宰する建築家の長坂常です。
隅田川のほとりの日本橋浜町のオフィスビルが並ぶ表通りから路地に入った一角に、茶室の精神に発想を得たというニューバランスの新たなコンセプトストアT-HOUSE New Balanceが2020年7月にオープンして1年。行こう行こうと思いつつあっという間に1年が経ってしまいました。
1階はデザイナーやアーティストとのコラボレーションアイテムや独自のオリジナルプロダクトを展開するショップです。スニーカーがずらっと並ぶ通常のニューバランスのショップを想像していくと見事に裏切られます。
2階には、このショップのディレクションを手掛けたニューバランスのクリエイティブチームTOKYO DESIGN STUDIO New Balanceのアトリエです。要するにオフィスなので、2階はスッタフオンリーのスペースです。
PRギャップ萌え
真っ白なT-HOUSE New Balanceの建物には、ニューバランスのロゴもなければ、店名サインもありません。ただただ白い壁が立ちはだかっています。
その真っ白な壁の中央に重厚な扉があるだけです。遠目から見えるその真っ白の壁は異様なものにさえ感じるくらいです。
建物に入ると、外観とは様子が一転します。室内には年季の入った木造建築の木組みが立ち上がっています。これらの木組みは、川越から移築された築122年の炭問屋の蔵を解体し、この建物の内部で組み直し収めたもの。要するに新築で建てられた鉄骨造の建物内に入れ子状態で蔵を支えた木造の構造体が入っているのです。
中央の吹き抜け部分▼
真っ白でソリッドな印象のファサードの重厚な扉の先に入ると、そこには新旧の建材が入り混じったこれまでに見たことのない空間が広がっていました。まさにギャップ萌え建築です。
まかない家具
T-HOUSE New Balanceの内部空間では、長坂常がこれまでに自身のアトリエで展覧会を開催して、発表してきた「まかない家具」を使っています。まかない家具とは、長坂常が作った造語で、工事現場で職人が即席で作った家具のことで、誰かに見せようという作為がなく、必要に応じて自分で作る純粋で機能的な家具のことです。
「T-HOUSE New Balance」のまかない家具は、既存の貫を安価な成型板のMDFに置き換えて、それをハンガーラックや照明などを設置する支持材としていたりします。
他にもあるようですが、1階のショップでは見つけられませんでした。2階にいろいろあるのでしょうか。見たいなぁ。
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3つのレイヤー
T-HOUSE New Balanceは3つのレイヤーが重って構成されています。1つめのレイヤーは新築の建物、2つめのレイヤーは古い木組み、そして3つめのレイヤーが「まかない家具」による什器です。
これは、長坂常が普通の古民家再生では面白くないという考えから生まれたアイディアです。確かに普通の古民家再生ではなく、見たことのない新しい空間でした。
新しいのか古いのか、判別がつかない新旧が入り混じった不思議な空間です。ここがこれから時を重ねていくとどう見えてくるのかそれも楽しみの一つです。
PRインスタレーション
T-HOUSE New Balanceでは、これまでにアーティストを迎えて、この新旧の時間が混じり合った空間でインスタレーションを発表しています。
2020年8月に行われたアーティスト玉山拓郎によるインスタレーション「3 plane shapes」を皮切りに、中庭の植栽を担当しているSOLSOが空間演出手掛けたり、グラフィックデザイナーとして活動する一方Nerholとして作家活動も行う田中義久のインスタレーション、WORKSHOP™によるインスタレーション「temporary/ structure / laboratory」、東京・八雲のアトリエを拠点に花と緑をデザインするTSUBAKIによるボタニカル・アレンジメントのインスタレーション、アーティストのカワイハルナによるインスタレーション「状態と光景」などなど。
ホンマタカシ展
現在は、写真家ホンマタカシのインスタレーション「TOKYO NEW SCAPES BY TAKASHI HOMMA」が開催されています。
「TOKYO NEW SCAPES」は、東京でのオリンピック開催決定の2015年9月から大会終了後の2021年11月まで、“変わりゆく東京”と“変わらない東京”の風景を撮影し続けたものです。
オリンピック開催に向け開発が進められた東京で、ホンマタカシが独自の視点で捉えた日常の景色が広がります。▼
東京の日常の風景がA4サイズに出力されていて、店内の壁の一面に貼られています。
来場者はその中から好きな一枚を選んで持ち帰ることができます。(1名につき1枚/ 期間中は1度のみ) 。少しづつ写真が減っていくことで展示が変化していくというインスタレーションです。
もちろん、私ももらってきました。
展覧会は2021年12月10日〜2022年1月25日まで。
コンセプトの茶室の精神というのはあまり感じませんでしたが、新しいのか古いのかわからない、これまでに類を見ない面白い空間でした。
PR基本情報
11:00〜14:00、15:00〜19:00 水木休
中央区日本橋浜町3丁目9−2 MAP
水天宮前駅徒歩約5分