人気があってすぐに予約が埋まってしまう、予約困難な状況が続いている早稲田大学国際文学館村上春樹ライブラリーにようやく訪問することができました。早稲田大学そのものも初訪問です。
PR村上春樹ライブラリー
村上春樹ライブラリーというくらいですから、収められているのは、刊行された村上春樹作品のすべて(日本語と翻訳本)が所蔵されています。関連書籍とあわせて、ギャラリーなどで閲覧できる蔵書が3000冊(2021年12月現在)です。
ライブラリーには、貴重な初版本に加えて、村上春樹本人からの寄贈・寄託を受け、執筆関係資料、書簡、インタビュー記事・作品の書評、海外で翻訳された膨大な書籍(50言語以上)が所蔵されています。また、村上春樹が蒐集したレコード・CDも数多く所蔵されています。
村上春樹本人は、開館の際の記者会見で「こういうものは本当は死んでから作ってもらいたかった」と冗談まじりに発言されていましたが、ハルキストはもちろんですが、そうでない人でも楽しめる内容になっています。
奥の壁に見えるのは村上春樹作の羊男です。▼
PR隈研吾設計
実は私の場合、村上春樹というより隈研吾設計の建物見学を目的に訪問しました。ちゃんと調べていなかったので、現地に行くまでリノベーション物件とは全く知りませんでした。
この建物建設費用の全額12億円を、早稲田大学の卒業生で、入学が村上春樹と同じ年だった(村上春樹は大学に7年在籍していた)ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正が寄付をしたことは有名な話です。
なぜリノベーション?
なぜ、わざわざリノベーションしたのかな。柳井さんが寄付金をケチったのかな?なんて下世話なことを考えてしまったのですが、そんなわけはありません。
建て替えではなく改修して使うにはちゃんと理由があって、建物が敷地の際に建っており、建て替えると斜線制限などにより、現在と同規模のものは建てられないのです。すなわち新築するとなるとかなり規模が縮小してしまうってことなんですね。
リノベーションですが、この建物は過去に耐震補強済みで、今回の工事でも、新設した吹き抜けまわりを補強したので耐震上問題ないわけです。
建物は五階建ですが、見学でききるのは地下1階から2階までの3フロアです。
早稲田大学国際文学館村上春樹ライブラリーの様子は動画を参照ください。▼
エントランス
エントランスには、アコヤ材による流線型のダイナミックな装飾がなされています。アコヤ材というのは、樹種ではなく、木材に酢酸を用いてアセチル化を起こすことにより、耐腐性能を飛躍的に向上させたものを言う。樹種としては主にマツです。
隈研吾によるとこのエントランスは、「現実の世界なのか非現実なのか。外部の庇は、村上作品のそういう希薄な存在感をイメージした」そうです。
確かに、硬質なホワイトキューブに絡みつく流線型の波のうねりは、どこか別世界への入り口に立ってるような、不思議な気持ちにさせてくれます。シンプルな装飾だけでこんなに印象的な建物の顔を作っちゃうってすごい。
半地下のカフェスペース周りにも庇状の波が。▼
PR階段本棚
村上春樹ライブラリーの空間で一番のポイントは1階のエントランスから入って正面にある地下から2階までの吹き抜け空間の階段本棚です。上部にはエントランスのアーチと呼応するように、幾重にも連なったアーチがかけられています。このアーチの素材はナラ材です。階段は、右側が歩行用で左側は腰掛けられるようにピッチが大きく設計されています。隈研吾はここをトンネルと呼んでいました。
本棚には、安藤忠雄設計の中之島と遠野の子ども本の森の選書も担当した幅允孝のバッハが選書した本が並びます。ですから、この階段本棚は村上春樹の著作ではなく、様々な本が並んでいます。訪れた人は思い思いの本を手に取り、階段に腰掛けて眺めることができます。
本棚の至る所にいる白い人がとっても可愛くてついつい写真をいっぱい撮ってしまいました。
今井兼次
村上春樹ライブラリーの隣にある早稲田大学坪内博士記念演劇博物館は、早稲田大学出身で早稲田大学建築学科の教授を長らく務めた今井兼次設計です。
今井兼次は安曇野にある禄山美術館などを手掛けた建築家で、すでにどちらも現存していませんが、隈研吾設計の根津美術館の前の建物や多摩美術大学の校舎なども手掛けています。
また、村上春樹は学生時代ここに通い詰めて演劇の脚本などを読み漁ったそうです。この建物の隣に隈研吾設計の村上春樹ライブラリーが建ったのの偶然ではないかもしれません。
建築のなかの文学、文学のなかの建築
私のように建築目的で訪問する人が少ないわけではない事を証明するかのように、村上春樹ライブラリーの2階展示室では、「建築の中の文学、文学のなかの建築」という展覧会を開催しています。この展覧会は、入館予約した人なら誰でも観賞することができます。
展覧会の内容は、もともとは普通の校舎だった早稲田キャンパス4号館が、隈研吾の手によって村上春樹ライブラリーとして再生するまでの過程を実際のプレゼン資料や図面、模型、スケッチ、工程写真などで見せる展覧会です。
また、建築と文学にまつわる書籍の展示も同時に行われています。
PRカフェ「橙子猫/Orange cat/オレンジキャット」
B1には、カフェ「橙子猫/オレンジキャット」があります。このカフェも誰でも利用可能です。カフェのある地下だけは入館予約がなくても入れます。
このカフェの名前は村上夫妻が学生時代に経営をはじめたジャズ喫茶「ピーターキャット」の由来になっているピーターという猫がオレンジキャットと言われる種類だったため、それにちなんで命名されました。
早稲田大学総長が学生に経営の機会を与えたいと考えたのがこのカフェ誕生のきっかけで、経営者メンバーの公募から始まり、学生がプロジェクトを立ち上げ、2021年10月に館と同時にオープンしました
このカフェの内装デザインも隈研吾によるものです。
カフェメニュー
リーズナブルな価格で本格的なコーヒーや食事が食べられます。やっぱり大学という場所ですからね。▼
ランチは済ませてきてしまったので、おやつにドーナツとコーヒーを。ポケットパークと言われるテラスがあって、日差しの入る気持ちの良いカフェ空間でした。▼
地下には、村上春樹さんの書斎という部屋もあって中には入れませんが、覗き見ることができます。
PR入館は事前予約制
現在、一般の村上春樹ライブラリー入館はwebによる事前予約制となっています。これがなかなか予約が取りにくいのが現状です。1枠あたりの定員は40名。入れ替え制で最大90分の滞在が可能。1回の予約で3名までの予約ができます。
予約可能枠は10:15 ~ 11:45、13:30 ~ 15:00、15:15 ~ 16:45です。12:00 ~ 13:00は、早稲田大学学生の優先入館時間帯となっているので一般の入館はできません。
入館者はこの札をかけて館内を自由に見学します。▼
予約は入館希望日の1ヶ月前の日付が変わる0時0分から予約が可能となります。私は、のんびり構えていては無理だとわかったので、狙った日付の1ヶ月前の日付が変わったと同時に予約しました。翌朝確認したらほとんどまだ若干の空きがありましたが、お昼頃には全て埋まっていました。確実に予約したいのであれば狙った日の1ヶ月前の0時に予約するのが確実です。
PR基本情報
10:00~17:00 水休 入館は事前予約制
写真撮影可能、動画NG(一部2階展覧会で写真撮影不可あり)
新宿区西早稲田1丁目6 MAP
東京メトロ 東西線 早稲田駅徒歩5分
早稲田の建築巡りなら下記を参照ください。▼