2025年10月13日(月)までの会期で大阪夢洲(ゆめしまで)で絶賛開催中の大阪・関西万博こと「2025年日本万国博覧会」。
建築とアートを巡るでは6月上旬にイタリアパビリオンなどを訪問しているのですが「ポーランドパビリオン」からもご招待をいただき、東京から日帰りで訪問してみました。
万博は建築の博覧会という側面も持ち、実際大阪・関西万博でもユニークで実験的な建築が数多く建ち、話題を呼んでいます。
今回のポーランドパビリオンもその構造や素材それと工法などがとてもユニークな建築ですし、その中で音楽や文学などポーランドの文化・芸術が展示されていて、まさに建築とアートなパビリオンです。

ポーランドパビリオンの建築はあの建築家の事務所出身だった!
このパビリオンの設計はポーランド人のアリツィア・クビツカとスペイン人のボルハ・マルティネスからなるユニット「Interplay Architects」です。

▲日本産の木材を組み合わせた一見和風の建築のようで、余白を活かしたポーランドの文化を反映させたもの。ポーランドと開催国日本のそれぞれへのリスペクトが感じられるます。そして「余白を活かす」点にポーランドと日本の文化の共通点が見えてきます。
隈研吾みたい・・・という声も聞こえて来そうですが実は「Interplay Architects」の2人は隈研吾の事務所での勤務経験もあるということで、師匠の母国でその影響を感じさせながらもさらに独自性を打ち出して行こうという決意を感じさせる建築になっていました。

▲またパビリオンの構造は「螺旋(Spiral)」からインスプレーションを得たもの。
外観も螺旋状ですが内部もやはり螺旋状になっていて、展示物をぐるぐる回りながら見ていると自然に順路通りに見学できるという優れた構造です。
ポーランドの人々が継承する「創造性遺伝子」を象徴する ”DNA” をイメージしたものだそうですが、らせん構造は微小なDNAから宇宙規模の銀河構造にまで共通する深遠なシンボルです。

▲螺旋状のフォルムの木造建築ということで非常に目立ち、大屋根リングの上からもよく見えます。
ポーランドパビリオンの展示
観光案内みたいな展示とか流行りの没入型映像が目立つ中で、ポーランドパビリオンの展示はかなりアーティスティックなものになっています。
大きくフィーチャーされているのはピアニストで作曲家のフリデリク・ショパンですが、伝統文化から現代アートまでをハイテクを駆使したインスタレーションで見せてくれるのです。
(日本では フレデリック・ショパン とする表記が普通ですが本記事ではポーランドパビリオンに従い フリデリク・ショパン と表記します)

▲メインテーマは「ポーランド。未来を切り拓く遺産」。

▲日本では正月などに7種類の野草・野菜(七草)を使った料理を食べる風習がありますが、なんとポーランドにも7種類のハーブ(野草)を使った料理があるのだそうです。
余白を活かした文化だけでなく、食習慣でもこんな意外な共通点がありました。

▲これは「心象の緑」という参加型インスタレーション。
タッチパネルを使って自分だけのハーブを創り出すことができ、それをスマホに保存できます。
保存したハーブはパビリオン後半にある「歴世」コーナーでもういちど、今度は大画面に投影されている様子を確認することができます。

▲これは「収穫前」というインスタレーション。
ポーランドの自然の移ろいの中で植物が見せる一瞬の姿を永遠に閉じ込めるというもの。これも日本文化に共通した感覚ですね。

▲これは「詩」。
ポーランドの現代詩人たちが俳句の表現形式に倣って詩が館内の各所に掲示されています。

▲パフォーマンスホールの入口には詩が印刷された紙片が壁を覆っています。
好きなものを持ち帰ることができます。

▲パビリオンに併設するレストラン「Poland.Taste」のテイスティングセット。
右下はキャベツを煮込んだ「ビゴス(Bigos)」。豚肉が入ったミートと野菜だけのベジタブルが選べます。
左下が問題の「ピエロギ」。見た目も食感もほぼ日本の餃子です。違いは肉が入っていないことくらいかも。モンゴル帝国が侵略を試みた西端のポーランドと東端の日本に似たような料理があるというのは歴史的な何かを感じさせます
セットは1人前4,900円ですが、日本でポーランド料理を食べられるところは極端に少ないので、こうした機会に食べてみておきたいですね。
ショパンの母国ポーランド
ポーランドの著名人というと、連帯議長でノーベル平和賞のレフ・ワレサ(後に大統領)、科学なら天動説のコペルニクスからキュリー夫人、映画ならアンジェイ・ワイダにキェシロフスキにポランスキー、文学ならスタニスワフ・レムみたいにすらすら出てきますが、音楽となるとパデレフスキやジャズ/ロックのSBBなどもいますが、知名度は圧倒的にフリデリク・ショパンではないでしょうか。

▲コンサートホールに置かれているのはヤマハのピアノ。たぶん浜松市とワルシャワ市が友好提携都市の関係だからでしょう。

▲ピアノの反対側にはスクリーンがあって数分間のミニアニメ《永遠のショパン(Timeless Chopin)》が上映されています。

▲そしてこのパフォーマンスホールでは毎日3回、ショパン・リサイタルが開催されています。
私たちが訪問した日はポーランド本国から来日したJulia Łozowskaさん(ユリア・ウォゾフスカ)さんによる演奏を聴くことができました。
リサイタルの開始時刻は毎日15時、17時それと19時の3回。ポーランドパビリオン自体は予約不要ですが、リサイタルだけは事前予約が必要です。

▲また館外で展示されている「やどり」という屋外インスタレーションはワルシャワのワジェンキ公園で催されているショパンコンサートを彷彿させるもの。
自由にヘッドフォンを取ってショパンの音楽を聴くことができます。
ポーランドパビリオンの混雑状況
私たちが訪問したのは7月の3連休の初日で、万博会場への入場者数でいう正味14万ほどの日でした。そのくらいの混雑だとポーランドパビリオンの入場まで30分程度並ぶ必要がありそうでした。
レストランの方はランチタイムを除けばそれほど待つ必要もなく入れそうです。
ショパン・リサイタル
会場:ポーランドパビリオン内パフォーマンスホール
開始時刻:15時、17時、19時 各回20分前後
演奏者:ポーランドパビリオンの公式サイトを参照
料金:無料
予約:要事前予約
フリデリク・ショパンウィーク
8月28日(木)から9月3日(水)はフリデリク・ショパン国立研究所が主催する「フリデリク・ショパンウィーク」として、様々なコンサート、映画上映などが行われます。
またショパンの自筆楽譜の原本がこの期間だけ特別展示されます。
特にショパンに思い入れがある方はこの期間に訪問するのが良いかと思います。
詳しくはポーランドパビリオンの公式サイトを確認してください。
ポーランド文化ウィーク
ポーランドウィークの翌週、9月4日(木)から9月10日(水)は「ポーランド文化ウィーク」です。
これは“若きポーランド”の遺産からアヴァンギャルドまで、ポーランドの音楽・文学・芸術を集中的に紹介するもので、ポーランドパビリオンだけでなく大阪市内各所さらには東京のベニューも使っての大規模なものになります
ポーランドは70年代頃からジャズで有名ですが、それが21世紀に入り一気に花を咲かせた感じで非常に盛り上がっていて、そんなジャズ系のバンドが一挙来日したり、エクスペリメンタルな音楽フェスの「Unsound Festivan」が開催されたりで音楽ファンにとっては気になるイベントです。
詳しくはポーランドパビリオンの公式サイトやJazz from Polandの公式サイト確認してください。
大阪・関西万博、ポーランドパビリオン訪問の注意点
東京からも日帰り可能
今回は朝の新幹線で大阪へ向かい、新大阪〜万博会場西口ゲートを結ぶシャトルバスを利用しました。
事前予約制で1人片道1,500円しますが確実に座れますし、シャトルバスの専用道路を使うのでほぼ確実に30分以内に到着します。

▲淀川沿いに建設中の「淀川左岸線(2期)」をアクセスルートとして利用するので大阪市内の渋滞を回避し、夢洲までの定時運行を可能にしています。シャトルバスだと渋滞にハマったりしないかと不安もありましたが、これなら渋滞知らずで安心です。
東口ゲートで夢洲駅を利用すると全く時間が読めないので東京へ帰る新幹線を逃す可能性もありますし、くたくたになった身で東口ゲートを出てから駅まで歩くのも辛いですし、電車に乗っても座れず本当に閉口しました。
ちょっと費用はかかりますが、西口ゲートを利用し行きも帰りもシャトルバスを予約するのがベストだと思います。
建築とアート好きへのプレゼント
特に建築とアート好きの方にはシャトルバスを利用するもう一つの理由があります。

▲新大阪駅/大阪駅/中之島から夢洲へ向かうシャトルバスは途中で「舞洲」という埋立地を通過するのですが、ここにはオーストリアの芸術家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーが手がけた「大阪市環境局舞洲工場」があります。
そしてこの舞洲工場がシャトルバスの車窓からは目の前に見えるのです。

▲こちらは夢洲から帰りのシャトルバスから見える舞洲工場。
ポイントは行きも帰りもシャトルバスの同じサイドの席に座ること。(要するに両側から見られるので行き帰りで別サイドを見学できるように)
実際に訪問しようとするとけっこう大変な場所にありますがシャトルバスに乗れば間近で見えてしまいますから好きな方にとってはかなりお得です。
フンデルトヴァッサーの舞洲工場を見てから万博会場のオーストリアパビリオンを訪問してみるのも良いかもしれません。
撮影について
ポーランドパビリオン内は写真・動画ともに撮影可能です。
ただし、ショパン・リサイタル中は写真撮影も動画撮影も、そして録音も禁止です。
イタリアやアメリカ、フランスあるいは日本の企業館ほどには話題になっていませんが、内容的にはアーティスティックなもので見応えもあるしショパン・リサイタルもあるポーランドパビリオンはおすすめです。それに私たちも訪問してみてびっくりしたくらいに日本とは文化が類似していて、そんな面での意外性も楽します。
大阪・関西万博へのアクセス方法やあると便利な持ち物、効率的な回り方といったTips類は今やWeb上に溢れているので、そうした情報を有効に活用しながら残り少ない万博を楽しんでみてください。
さいごに

今回は大阪・関西万博ポーランド政府副代表(兼パビリオン館長)のマルタ・ジェリンスカさんにも取材させていただき、パビリオンのコンセプトなどについて貴重なお話を伺うことができました。
またパビリオンスタッフの方々からもインスタレーションについて詳細な解説をいただくことができました。関係者の方々、ありがとうございました。
基本情報
ポーランドパビリオン
会期:2025年4月13日(日) – 10月13日(月) 会場:大阪夢洲 |