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国立近現代建築資料館での《日本の万国博覧会 1970-2005》展で万博の意義を考えてみよう。


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2025年4月13日(日)に「2025年日本国際博覧会」、通称 ”大阪・関西万博” が開幕しました。

日本での万博(万国博覧会)としては20年ぶりとなるもので 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにSDGsが達成された社会を目指すための博覧会です。

中でも大きな話題なのが建築家で大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーでもある藤本壮介が設計した「大屋根リング」。大阪・関西万博会場のシンボルとなる直径700m近い巨大な木造建築物です。

”大阪万博” で ”大屋根” と聞くと、前回1970年の大阪万博(EXPO’70)で丹下健三がデザインした「大屋根広場」が思い浮かびますね。それもそのはず、万博と建築は切っても切れない関係がありますから。

《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館, 2025, 写真:建築とアートを巡る

▲万国博覧会の元々は、19世紀に世界各国の物品を集めて展示する展覧会として始まったものです。

そして万国博覧会は近代建築の発展にも貢献してきました。ロンドンでの第1回万国博覧会での水晶宮(クリスタル・パレス)は鉄とガラスによる建築の時代を象徴するものですし、パリ万博でのエッフェル塔は人類の建築技術の進歩をシンボライズするものです。

では1970年の大阪万博における建築は? その後日本で開催された万国博覧会の建築は?

そんな疑問にフォーカスした展覧会《日本の万国博覧会1970-2005》が湯島の国立近現代建築資料館で開催されています。

2025年3月8日(土)から5月25日(日)までが第1部「EXPO’70 技術・デザイン・芸術の融合」
6月14日(土)から8月31日(日)までが第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」という二部構成。

まずは前回の大阪万博であるEXPO’70について代表的な施設の図面等を展示する第1部の概要をレポートしたいと思います。


国立近現代建築資料館とは

国立近現代建築資料館は2013年の5月に開館しました。

国立近現代建築資料館, 2024, 写真:建築とアートを巡る

日本の近現代建築は、世界の文化や芸術においてとても重要な役割を果たしています。であるにもかかわらず、これまでその価値を次の世代にしっかりと伝えていくための体制が十分ではありませんでした。

そこで、貴重な近現代建築の資料(図面や模型など)を守るための取り組みをとしてその調査がスタートしました。具体的には全国的な調査を行い、どんな資料がどこにあるのかを把握します。そして、大学などと連携して、必要な資料を保護し、劣化や散逸、さらには海外への流出を防ぎ、緊急に保護が必要な資料を収集・保管することも同時に行なうことがこの建築資料館の任務です。

それらの資料を企画展という形で一般にも公開しているのが、建築資料館で年に数回開催している展覧会です。

ここで行われているのは、情報収集、資料の収集・保管、展示・教育普及そして調査研究等です。通常の美術館が行なっていることとほぼ同じですね。

ちなみに国立近現代建築資料館の名誉館長は安藤忠雄です。

《日本の万国博覧会1970-2005》会場

湯島地方合同庁舎の新館と別館をリノベーションして作られた建築資料館の主となる展示室は建物の2階です。

《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲湯島地方合同庁舎の一角にあるので建物自体は古いです。でもその古さがなんともそそります。

展示室へ向かう階段の横にはいつもこのような大型パネルが設置され、なんの展覧会が開催中なのかが一目でわかるようになっています。

そしてなんとも味のある階段を登って建築資料館の展示室へ向かいます。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

2階の展示室に入ったところ。

本当はエントランスに入ってすぐのところで菊竹清訓による「エキスポタワー」の図面が来場者を迎えてくれるのですが、写真撮影は禁止です。

本展はそのように撮影禁止の資料が多いです


第1部「EXPO’70 技術・デザイン・芸術の融合」

2025年5月25日までの第1部は1970年の大阪万博がメインなので、会場構成や各パビリオンの資料を中心に展示されています。

その後日本で開催された万国博覧会、
沖縄国際海洋博覧会(沖縄海洋博/EXPO’75)
国際科学技術博覧会(つくば科学万博/Tsukuba Expo ’85)
国際花と緑の博覧会(花博/EXPO’90)
2005年日本国際博覧会(愛・地球博/愛知万博/EXPO2005)

については第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」で詳しく紹介される予定です。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲中央のスペースでは各万博の概要と会場写真、それと図録などが展示されています

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲大阪の千里丘陵に広がる会場の写真。

戦後の高度成長期のピークを迎えるという時期に、梅棹忠夫や小松左京など関西の知識人たちが人類の未来を本気で考え壮大なテーマに落とし込み、現代芸術家の岡本太郎が展示プロデューサー、会場の総合設計は丹下健三、ストリートファニチャーなどは剣持勇などが担当というように、当時の日本のアート、技術、デザインの最高峰クラスの人材が関わったのですから、それは大成功して伝説的なイベントになったの当然だろうなと思えます。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲会場構成もですし、各パビリオンも建築家がプロデューサーとして関わっていたようです。

EXPO’70の公式図録には建築のクレジットもしっかり入っています。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲1970年ということは55年前の出来事。

リアルタイムで体験した世代も少なくなってきましたし、運営側で関わったことがある人はもっと少なくなっています。

こうした丁寧なキャプションを読むと。どんな施設(パビリオン)があって、どのようなイベントがあったかもよく分かります。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲前川國男は「鉄鋼館 (現EXPO’70パビリオン)」と「自動車館」を手がけています。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲EXPO’70での菊竹清訓というと「エキスポタワー」ですが、実はタワー周辺の南広場やそれらを含むエリア全体のマスタープランと機関施設をも担当していたのだそうです。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲じっくり読めば読むほど、EXPO’70に関わった人たちの熱意や万博への想いが伝わってきます。

ここ国立近現代建築資料館でEXPO’75の資料を建築という切り口で見るだけでも、万博に注いだエネルギーが分かります。アート分野、サイエンス分野など細かいジャンルに分ければ当時の日本の国力を挙げてのイベントだったのだと分かりますし、70年代以降の日本の方向性を決めた万博だったのだとも分かります。

2025年大阪・関西万博へ行くかどうかは別にして、《日本の万国博覧会1970-2005》で1970年の日本を振り返ってみてはどうでしょうか。

国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲ちなみに展示室内の椅子はミース・ファン・デル・ローエデザインのバルセロナチェアオットマンの白と黒ですで、コロナ禍以降このようなカバーが掛けられています。

ガイドツアー

本展では国立近現代建築資料館研究員によるガイドツアーを4月と5月の木曜日に行う予定です。

開催日は4月3日(木)、4月17日(木)、5月1日(木)、5月15日(木)で時間はそれぞれ14時〜15時の1時間。

参加に予約は不要で14時前に2階展示室ロビーで集合。先着15名程度ですが参加者が多い場合は複数班に分けて開催するそうです。


第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」

こ2025年6月14日(土)からは第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」です。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲第1部の会期中も沖縄海洋博以降の万博の概要は紹介されています。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲大阪での万博は1970年の他に1990年にも開催しているので、2025年の万博で3回目!

ちなみに1970年の総入場者は6,422万人、1990年は2,312万人だったそうです。

展示風景, 《日本の万国博覧会1970-2005》, 2025, 国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲1975年の沖縄海洋博での水族館は建て替えられ今は「沖縄美ら海水族館」という沖縄観光の目玉で世界中から観光客がやってくる施設になっています。また2005年の愛知万博の跡地にはジブリパークが開園して世界的な人気を集めています。

2025年 大阪・関西万博のレガシーととしてどのようなモノが遺るのか楽しみです。


国立近現代建築資料館の二つのアクセス方法

国立近現代建築資料館へのアクセス、実は2つ方法があります。

1)湯島地方合同庁舎から(入場無料)

このアクセス方法は湯島合同庁舎が開いている平日のみです。その代わり旧岩崎邸庭園の入園料が不要です。

湯島地方合同庁舎 写真:建築とアートを巡る

▲湯島駅から湯島ハイタウンの前を通って湯島地方合同庁舎へ向かいます。地方合同庁舎の門の前にこのような看板パネルがあります。

門を入ったら守衛室に建築資料館に行く旨を伝えるとビジターバッジがもらえるのでそれを目につくところに付けて入構します。

建築資料館は湯島地方合同庁舎内でもかなり奥の方にあるのですが、ポイントポイントにポスターと共に進行方向が提示されているので迷うことはないでしょう。

守衛室から建築資料館までは2分ほどで到着します。

国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲このようなコンクリートの壁が見えてきたら到着です。スロープから入ります。

国立近現代建築資料館 写真:建築とアートを巡る

▲意外と湯島地方合同庁舎の建築も味があって魅力的なのでこのアクセス方法も気に入っています。

2)旧岩崎邸庭園から(要入場料)

土日祝日の場合は重要文化財の「旧岩崎邸庭園」からしか入れません。平日は湯島地方合同庁舎からも旧岩崎邸庭園からも入れます。

旧岩崎邸庭園から入る場合は入場料がかかりますが旧岩崎邸や庭園の見学をすることができます。

旧岩崎邸庭園, 2025, 写真:建築とアートを巡る

▲湯島駅から湯島ハイタウンの手前で曲がって旧岩崎邸庭園の入口へ。

サービスセンターで入園料を支払います。

ここは都立の施設なので毎年10月1日の「都民の日」には無料になります。ただその日に建築資料館まで行けるかどうかは未確認です。

旧岩崎邸庭園, 2025, 写真:建築とアートを巡る

▲旧岩崎邸へ通じるを上り坂。

このまま道なりに進めば旧岩崎邸です。

旧岩崎邸庭園, 2025, 写真:建築とアートを巡る

▲土日や祝日に行った場合は、有無を言わさずこちらのコースなのでついでに旧岩崎邸も見学します。

この写真の右側に建築資料館の入り口があります。

国立近現代建築資料館, 2025, 写真:建築とアートを巡る

▲写真左の茶色い建物が建築資料館の守衛所です。

守衛所で手続きを行い建物に沿って進むと建築資料館です。

そして旧岩崎邸から入った場合は、出る時も旧岩崎邸からになります。

国立近現代建築資料館へ行く前に知っておきたい情報まとめ

・国立近現代建築資料館は自体は入場無料

・アクセス方法は2通り、旧岩崎邸庭園から入るか湯島地方合同庁舎から入るか

・旧岩崎邸庭園から入る場合は、旧岩崎邸庭園の入園料が必要

・湯島地方合同庁舎から入る場合は入園料などは不要

・土日祝日に入れるのは旧岩崎邸庭園からのみ

・湯島地方合同庁舎から入れるのは平日のみ

・国立近現代建築資料館は展覧会図録も事務室前にて無料配布(一人1冊)

・国立近現代建築資料館は基本的に写真撮影可能、写真撮影不可のものには禁止マークあり


初訪問であれば、平日でも旧岩崎邸庭園側から入って重要文化財のジョサイア・コンドルの建築を見学するのもありです。

その場合、かなり時間がかかるので時間に余裕を持って訪問したいです。

上級者は湯島合同庁舎から徒歩で10分ほどの場所にある東京大学の建築巡りもありですね。

湯島ハイタウン, 2024, 写真:建築とアートを巡る

あ!あとお隣の昭和の集合住宅湯島ハイタウンも背後から見ると室外機の並びとか壮観で好きです。

さらに、お向かいにある湯島天満宮で参拝して、、、なんていうと丸一日コースです。

開催情報

日本の万国博覧会1970-2005

会期:第1部「EXPO’70 技術・デザイン・芸術の融合 」 2025年3月8日(土)〜5月25日(日)
第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」 2025年6月14日(土)〜8月31日(日)

会場:国立近現代建築資料館

開館時間:10:00~16:30

休館日:月曜日

入場料:無料(ただし土日祝日は旧岩崎邸庭園からの入場料一般:400円が必要)

住所:文京区湯島4丁目6−15 MAP

アクセス:東京メトロ千代田線「湯島」駅 1番出口より徒歩8分


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