外苑前の駅から徒歩5分ほどのキラー通りに面した超有名建築「塔の家」です。都民なら一度は前を通ったことがあるのではないでしょうか。アート好きなら尚更です。なぜなら、この建築史に残る名建築は、ワタリウム美術館の向かい側に建っているからです。
そんな有名な建築あったっけ?と思われるかもしれません。
というのも有名建築というとそれなりの規模を想像するでしょう。しかし、塔の家は狭小住宅の傑作なので、とてもコンパクトです。
かなりの嗅覚の持ち主か建築好きでないと、見過ごしてしまうかもしれません。そんな規模の建築です。
PR建築史に残る名作
「塔の家」は建築史に残る名作住宅です。坂倉準三建築研究所出身の建築家、東孝光(あずま・たかみつ)が自邸として建てた出世作であり、初期の代表作です。
竣工は1966年。「塔の家」という名前から想像がつく通り、1966年当時この家の周囲に高い建物はなく、わずか20坪という敷地ではあるものの、地上5階建の建築はまさしく「塔の家」だったのです。
2003年にDOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築に選出され、2018年には東京都選定歴史的建造物に指定されています。
扉のない家
外苑前の6坪弱(20平方メートル)という狭い敷地に、鉄筋コンクリート造で地上5階地下1階の縦に長い空間に居室を塔状に積み立てた住宅です。
ワンフロアにワンルームで1階の玄関以外、トイレにもバスルームにも扉も間仕切りもないという大胆かつ効率的なデザインになっているということです。
前を何度も通ってはいますが、内部に入ったことはないので、読んだり聞いたりした話ではありますが、縦に長い塔の家は、吹き抜け空間によって狭さを感じないように設計されているんだとか。
いつか中に入ることができるといいなと前を通るたびに思っています。
コンクリート
建ってから58年という歳月が経過しているので、それなりに経年変化しているものの、コンクリートの荒々しい味わいは、むしろ現代的にさえ思えます。デザインは全く古さを感じさせず、むしろ約60年前にこの家が完成した時、相当話題になったというのがよくわかります。
離れてみると荒々しいコンクリートを削って制作した彫刻のようです。東孝光が設計するときに彫刻を意識したとは思いませんが、内部の機能も当然ながら、独特の美しいフォルムにもかなりこだわったであろうことが窺い知れます。
コンクリートの狭小住宅というと安藤忠雄の住吉の長屋が有名ですが、住吉の長屋が完成する10年前に誕生したこの「塔の家」の影響は計り知れないでしょう。
「塔の家」をはじめとして、外苑前にはたくさんの見るべき建築が集中しています。
外苑前で建築とアートを巡る場合は、休憩時間に立ち寄りたいカフェ情報も掲載している「外苑前で見るべき建築とアートとカフェを巡る 名建築、ギャラリー、カフェ情報がいっぱい」を読んでから巡ってみてください。
基本情報
塔の家
渋谷区神宮前3丁目39−4MAP |