愛知・岐阜で建築とアートを巡る旅で訪ねた名建築です。
愛知県で巡ったのは1950年代に建てられた現存する貴重な丹下健三の初期建築「墨会館」です。
愛知県に現存する唯一の丹下健三建築でもあります。
正直、訪れるまでこんなに見応えのある建築だとは思っていませんでした。(失礼!)

はいつできた?
墨会館は、丹下建造の設計で1957年に竣工しました。丹下健三が44歳の時の建築ということです。
(ちなみにここ墨会館竣工の翌年に丹下健三の代表作の一つである香川県庁(現東館)が竣工しています。
現在は一宮市の所有となっていますが、元々は墨さんという方が建てたオフィスビルです。だから墨会館という名称なのです。
繊維関連事業の艶金興業株式会社 3代目社長の墨敏夫により、当時東京大学工学部建築学科助教授だった丹下健三へ依頼して建設されました。
墨会館は、2008年に登録有形文化財に指定され、2010年に一宮市へ譲渡され現在に至ります。一宮市へ譲渡と同時に艶金興業は繊維関連事業から不動産事業のみに業態変更され本社も移転しています。
というわけで墨会館は墨会館であると同時に地域の公民館でもある「小信中島公民館(こぶなかしま)」という名前でもあるのです。

どんな建築?
Y字路の間の三角形の土地に建っています。2階建ての低い建築で、周囲をコンクリートの壁が覆っています。

▲この方向から見ると要塞のような得体の知れなさ感がありますが、壁より高いために壁越しに見えている直線的な2階部分に比べて、壁は有機的な曲線を描いていてる上に勾配があります。ですからコンクリートに覆われている割には威圧感はあまり感じません。
というのも壁沿いに入口に向かって歩くと、二つ綺麗に並んだル・コルビュジエの影響を感じる雨樋が来訪者の気持ちを和ませてくれるのです。

▲逆側は一部グリッド状のテラコッタが貼られています。
このテラコッタはエントランスにも使われていますが、外壁のものは孔が塞がれていてそこには深いブルーなど繊維関連事業を意識した彩色が採用されています。

▲エントランスはピロティで車寄せのスペースになっています。
中央には、地面には石、上は吹き抜けになっていて空という石と空の対比が人々を出迎えてくれます。その空間の壁面には、孔の空いたテラコッタが積まれ、その先の庭園の気配が感じられます。
このピロティ空間は香川県庁舎を彷彿とさせる空間でした。

▲中に入ってみます。入ると正面に2階への階段があります。しかし、残念ながら2階の見学はできません。元々入って右側の建物の1階は事務スペース、2階が社長室、会長室など偉い人のスペースというレイアウトでした。公民館として用途変更されて、内部のレイアウトは改修が行われています。

▲真ん中の庭を挟んで元事務スペースだった2階建ての建築を望みます。
渡り廊下でつながるこちらのスペースは本社ビルだった時から集会所でした。庭の芝生が綺麗に手入れされていて、大事に使っていることが伝わりました。

▲丹下健三デザインで天童木工制作の家具もありました。この家具の横の壁面は丹下健三展示コーナーとなっています。
我々のように遠方からも見学者が尋ねてくるのでしょう。充実したパネル展示コーナーでした。
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見学できる?
建築見学可能です。
墨会館が開館している日の10:00-12:00、13:00-16:00に見学受付可能です。
特にガイドがあるわけではなく自由に見学できます。ただ通常はガイドなどはいませんが、丁寧な解説がパネル展示されています。

ただし、2階は見学不可です。1階は玄関ホールと展示コーナーと庭に面したの廊下は見学できますが、会議室などはみられません。
また、渡り廊下の先の集会室もロビーは見学できますが、集会室は使用していない時のみ見学可能です。
我々が訪問したときは、集会室が使用中だったためロビーのみの見学となりました。また写真撮影も可能です。

ポイント
・周囲を1周してみた方がいい
・雨樋が可愛い
・グリッド状のテラコッタの色にも注目!
・内部の見学ができる日、時間帯に行った方が良い
・ガイドを希望する場合は墨会館建築研究会へ
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基本情報
墨会館(小信中島公民館)
建築見学可能時間(開館日のみ) 10:00-12:00, 13:00-16:00 愛知県一宮市小信中島南九反11−1 MAP |