近代建築の巨匠ル・コルビジェに師事し、百人町の自邸に始まりアテネフランセや大学セミナーハウスなど、カラフルで彫塑のような建築を手がけただけでなく、数々の著作本の執筆から登山まで幅広い活動で知られる建築家吉阪隆正の展覧会を観に東京都現代美術館に行ってきました。
PR吉阪隆正
このブログでもすでに代表作である2つの建築、アンデスの夕陽色のアテネフランセと大地に楔を打ち込んだような大学セミナーハウスを紹介している吉阪隆正の展覧会が開催されることを知って楽しみにしていました。
少年時代を外交官であった父の任地スイス、ジュネーブで過ごし、日本に帰国後早稲田大学へ行きました。
フランス語が堪能であったことから戦後ル・コルビュジエのアトリエに勤務していました。ですから前川國男、坂倉準三、と並んでル・コルビジェの3人の日本人弟子と称されています。
フランスから帰国後は母校の早稲田大学建築学科の教授として、またU研究室のボスとして、多くの建築家を育てました。
また、建築の枠にとどまらず、教育者・登山家・冒険家・文明批評家としても多くの表現者に影響を与えた人物です。執筆した書籍も多数あります。
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展覧会の構成
展覧会は時代やテーマによって7章で構成されています。会場は現代美術館の1階の展示室です。展覧会タイトルの“パノラみる”は吉阪隆正による造語で、地域や時代を超えて見渡すことなどを意味しています。まさにこの展覧会は吉阪隆正という建築家を俯瞰でパノラみる内容です。
第1章出発点
出発点と題した1章では、吉阪隆正の生涯を年表を通じて見ることができます。展示室の中央には、をメビウスの輪状にアルゼンチンの神話「宇為火のタチノオハナシ」が描かれています。
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第2章ある住居
1960年に新宿の百人町に建設した自邸の完成までの経緯を書いた「ある住居」という書籍を出版しています。この百人町の自邸にはコルビジェも訪れたそうです。その自邸を中心とした展示です。
記録映像に音声はなく、古いものなので画質の状態は決していいものではありませんが、貴重な映像です。手前は吉阪自邸の模型です。▼
壁面には原寸大1/1スケールの自邸と庭が図面によって再現されています。CADではなくて手書き青焼きの時代のものですね。▼
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第3章建築の発想
この展覧会のコアと言える展示です。1954年の浦邸から晩年の大学セミナーハウスまで、図面、模型、写真、映像による建築展らしい内容です。
1960年代には、吉阪研究室からU研究室となって一人一人が独立してアイディアを提案する「不連続統一体」理論実践していきました。
この大きなテーブルに配してある椅子に座ってOKです。▼
壁の色は各々物件のイメージカラーです。ピンクの壁はアテネフランセです。▼
大学セミナーハウスの模型は油土によるもの。この油土の模型はセミナーハウスにも展示されていましたが、美術館に展示してあるのは、この展覧会のために新たに制作した模型のようです。▼
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第4章山岳・雪氷・建築
幼少期のスイスでの登山経験から、早稲田大学の山岳部で活動をしていました。実は登山は建築よりも熱心だったと言われています。そんな吉阪は当然いくつかの山小屋の設計も手がけています。
右は、ドーム状の黒沢池ヒュッテの構造を1/3スケールで再現したもの。▼
第5章原子境から文明境へ
吉阪隆正は、いつも集印帖を「パタパタ」と呼んで常に持ち歩き写生をしていました。そのスケッチブックの展示です。▼
第6章あそびのすすめ
旅先などで描いていたパタパタスケッチと、ダイアグラムや愛用品の展示です。▼
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第7章有形学へ
吉阪研究室は、都市計画、主に都市や農村地域の計画・研究を行っていました。そのん研究の紹介です。
宙に浮いているのは、サイコロ地図です。▼
展覧会場をパノラみる
入り口のところで配布しているリーフレットは「パノラみる展の会場をパノラみる」です。▼
条件付き撮影可
写真撮影は可能ですが、個別作品の撮影、接写は不可です。これがなかなか曖昧な表現なので、判断しづらい感じです。すごい近づいて模型を撮っている人が注意されているのは目撃しました。動画はNGです。
通常の建築の展覧会と違って、幅広い活動をした吉阪隆正の伝記を読み解くような内容でした。かなり読み物が多く、鑑賞するというより読書する感覚に近い展覧会です。時間に余裕を持って
吉阪隆正の代表作と名高いヴィラクゥクゥの記事はこちら▼
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展覧会基本情報
2022年3月19日(土)-6月19日(日) 月休、3/22(3/21開館)
10:00-18:00 一般1,400円/大学・専門学校・65歳以上1,000円/中高生500円/小学生以下無料
江東区三好4丁目1−1 MAP
アクセス:半蔵門線清澄白河駅B2出口徒歩9分、大江戸線清澄白河駅A3出口徒歩13分
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