長野駅から地下鉄やバスでアクセスする長野県立美術館は、7年に一度のご開帳で有名な善光寺の東隣に位置する県立美術館である。
前身は1966年に開館した長野県信濃美術館で、2021年に長野県立美術館としてリニューアルオープンした。その際の設計は宮崎浩+プランツアソシエイツが手掛けている。
隣には、静謐で美しい谷口吉生設計の長野県立美術館 東山魁夷館が位置している。東山魁夷館は現在の長野県立美術館より30年以上も前の1990年に開館した。
お隣の善光寺の歴史と比較したら若輩者極まりないが、県立美術館としては、長野県信濃美術館開館の1966年から50年以上の歳月をかけて現在の姿になったのだ。
新しい長野県立美術館を設計した宮崎浩が手がけた仕事として、同じく長野県は安曇野市にある同地出身の工芸作家高橋節郎の個人美術館「安曇野高橋節郎記念美術館」がある。
高橋節郎記念美術館は、1階だけのコンパクトな美術館だが、エントランス脇に水盤を配し、長閑な田園風景を眺められる大きなガラス面など、非常にシンプルで上品で落ち着きのある美術館だ。
その要素は、長野県立美術館にも引き継がれている。
東山魁夷館へ往来できるガラス張りの空中廊下は、段差のある水盤の上を通っている。この水盤の上の廊下には、意図しているかどうは不明だが、(天気によって、時間いよって)美しい水面のリフレクションが現れる。まさに建築の神様からの贈り物だ。
この場所では大御所女性アーティストの中谷芙二子の霧の彫刻も鑑賞することができる。これは必見の屋外インスタレーションだ。まさに建築とアートの素晴らしい共演だ。
しかし、寒さの厳しい長野なので、冬場は霧の彫刻は停止しているし、メンテナンスで水が抜かれていることもあるので注意が必要だ。初訪問するなら春から秋にかけてがおすすめだ。そして、初訪問で建築とアートと建築の神様からの贈り物の3つがみられたらラッキーだ。