竹橋の「東京国立近代美術館(MOMAT)」で《ハニワと土偶の近代》という展覧会が開幕しました。
「ハニワ(埴輪)」とは3世紀後半から6世紀後半の古墳時代の日本で造られていた素焼きの土器。「土偶」は縄文時代の日本で造られていた土製品。
どちらも歴史の教科書などでおなじみの造形物ですが、ハニワは飛鳥時代の前ですから1,500年以上、土偶は弥生時代のその前の時代ですから12,000年以上も昔のものです。
そんなハニワと土偶をタイトルにした展覧会がなぜ東京国立近代美術館という会場で開催されるのか、そして「ハニワと土偶と近代」ではなく「ハニワと土偶の近代」というタイトルなのはなぜ?てにはおが間違っている?
どのような展覧会なのか不思議に思っていたところで内覧会に参加する機会があったので訪問させていただきました。
実際に展覧会の構成や展示作品を見てなるほどと納得。なぜハニワと土偶が近代美術館でこのタイトルで展覧会になっていたかも十分理解できました。
この展覧会の内容が広く知られれば大盛況、大人気になるのは必至です。
そこでチケット料金や予約の有無、写真撮影の可否、ミュージアムグッズ、展覧会オリジナルグッズ、音声ガイドは誰? などなど、どこにも書いていないハニワと土偶の近代展完全ガイドです!
PRハニワと土偶の近代展
ハニワも土偶も教科書に載っているくらいですから日本で教育を受けた者なら誰もが知っている身近な存在です。
しかしその存在が認識されるようになったのは意外と最近です。さらに美的価値が認められたりするのは戦後になってから。
そんなハニヤや土偶のイメージですが今では日本の歴史・文化を語るのに欠かせないものになっています。しかもファインアートの世界からポップカルチャーまで。
ハニワと土偶が近代においてどのように受容されるようになったのか、それを美術を中心に紐解くので「ハニワと土偶の近代」展なのです。
本展に関する重要な情報が一つ。実は本物の埴輪の展示は2点だけ、土偶に至っては実物は1点も展示されていません。それがこの展覧会の本質を物語っています。
▲今アラフォーを過ぎた年代の方には懐かしいNHKの番組「おーい!はに丸」の「はに丸」とお供の「ひんべえ」。見ての通りで主人公はハニワの王子。
「ハニワと土偶の近代」展でも番組が紹介されていますし会場入口では等身大キャラクターが出迎えてくれます。
この展覧会の会期は2024年10月1日(火)から12月22日(日)までの3ヶ月弱。
日本の近現代の美術を遥かな過去の造形作品という視点から振り返るとてもユニークな展覧会ということで、じわじわと人気が高まるでしょう。
またNHK主催でもあるので日曜美術館での紹介はもちろん、はに丸のリバイバルも予想されます。要するに会期末につれ混雑するのは目に見えている展覧会ですから早めの訪問、できれば10月中に訪問するのをおすすめします。
ハニワと土偶の近代展展の会場構成
展覧会は次のように序章から3章までの全4章で構成されています。
序章 好古と考古
1章 「日本」を掘りおこす
2章 「伝統」を掘りおこす
3章 ほりだしにもどる
またここで過去に開催された大竹伸朗展や民藝100年展の時のように2階の展示室は使われていません。ハニワと土偶の近代展は1階の展示室だけで完結しています。
▲序章で展示されている蓑虫山人の「陸奥全国古陶之図」。土器や土偶が作品中に描かれています。
地面から掘り出された遺物を蒐集し愛でる趣味は古くから存在し「好古家」と呼ばれていました。明治以降になると同じ遺物であっても科学的な視点からの「考古学」としての研究対象となるわけです。
▲1章は《「日本」を掘りおこす》というタイトルですが ”神話と戦争” というサブタイトルが付いています。
考古学的な成果によりハニワの由来が明らかになるにつれハニワは日本の歴史を象徴するものとなり、日本の神話を描くビジュアルの重要なイメージとなります。
また皇紀2600年を祝う頃、仏教伝来以前の日本人の心の源流を探る動きの中でも重要な役割を果たし、戦意高揚などにも使われていきます。今の日本の保守派と言われるような人たちがイメージする ”日本の伝統” が出来上がった時代。ハニワを元にした防人のイメージなどがその代表でしょう。
また抽象的な表現がされているハニワは、当時は抑圧されていた抽象画家たちにとっての絶好の隠れ蓑として重宝されていたようです。
PR▲2章は《「日本」を掘りおこす》というタイトルで、量的にも質的にも本展の白眉とも言える内容。
そのため全部で5つのサブセクションに別れています。
敗戦後という時代背景の中でアイデンティティの再生を行おうという作家たちの重要なモチーフとして取り上げられ、今に通じる土偶やハニワのイメージが形成された時代です。
またハニワ(埴輪)の実物が展示されているのも2章です。
ハニワ好きなイサム・ノグチ、縄文時代の土偶に生命力や美を発見した岡本太郎。彼らの作品も多く展示されています。
▲勅使河原蒼風も土偶をモチーフとした作品を発表。
▲芥川(間所)沙織の「古事記より」は本展で最大、約13.5mのろうけつ染めの作品!
なお芥川(間所)沙織は同時開催の《所蔵作品展 MOMATコレクション》でも小特集が組まれています。《ハニワと土偶の近代》展と併せてどうぞ。
▲日本の伝統文化を写真に収めてきた土門拳もハニワや土偶を幾度となく題材に取り上げています。
▲3章は「ほりだしに戻る」。
1970年代から80年代にかけてのSFブーム、オカルトブームでは特撮映画やテレビ、漫画など日本のサブカルチャー、ポップカルチャーにも大きな影響を与えています。
ざっと挙げるだけで映画「大魔神」シリーズ、諸星大二郎の一連の作品からもっとポピュラーなものまで。その流れの中でNHKの「おーい!はに丸」が制作されています。
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ハニワと土偶の近代展の写真撮影について
本展は原則として写真撮影が可能です。
しかし、動画撮影はNG、フラッシュ、三脚、自撮り棒なども当然NGです。
撮影禁止の作品には撮影禁止マークがついているので注意しましょう。
なお本記事では内覧会で特別に許可を得て撮影しています。
ハニワと土偶の近代展鑑賞時間の目安
会場は1階だけですが、資料も多いですしじっくり見るなら2時間は欲しいところです。
また、上階のMOMATコレクションも見るならば3時間コースは必須です。
ハニワと土偶の近代展のミュージアムグッズ
展覧会場の最後に特設のかなり広めのミュージアムショップが開設されています。
▲めちゃくちゃカワイイTシャツ。
左は目と口が空いただけのハニワの顔、右は遮光器土偶の遮光器(ゴーグル)をモチーフにしたものです。
価格はどちらも税込で3,850円。
▲展覧会の公式図録は税込み3,000円です。
表紙はハニワの顔のように丸く抜かれています。
ただ開幕に間に合わず、10月8日(火)からの販売開始。それまでは会場ショップに限っての予約販売になります(送料無料)。
▲ルートートは5,400円、クッションカバーは3,300円。
靴下もハニワと土偶があってどちらも1,650円。靴下は結局2足買わないといけないですねぇ。
▲ガチャもありますよ〜。
残念がらはに丸バージョンはないみたいです。
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ハニワと土偶の近代展の音声ガイド
音声ガイドは「おーい!はに丸」ではに丸を担当していた声優の田中真弓さんです。
▲最近では傑作と評判のNHKの朝の連続ドラマ「虎と翼」にも出演していました。
貸出料金は650円。アプリ「いつでもミュージアム・トーク」800円もあって、アプリには「はに丸問答」のロングバージョンが収録されているそうです。
ハニワと土偶の近代展をみる前に
国立近代美術館の展示室に入る前に、再入場はできませんのでトイレは済ましておきましょう。美術館にはありますが、展示室内にトイレはありません。
また、荷物はロッカーに預けましょう。模型などケースに入っていない展示品も多いです。カバンやリュックが展示物に触れて破損!なんてことにならないように荷物は無料のロッカーに!100円玉が返却されるシステムのロッカーなので、100円玉の用意も忘れずに!
ロッカーは美術館に入ってすぐ右側のトイレの手前にあります。
まとめます。
・再入場不可なのでトイレはすませておきましょう!
・荷物はロッカーに預けよう!
・無料ロッカーを利用するために100円玉を用意しておこう!
ハニワと土偶の近代展チケットと予約について
事前予約制ではありません。いきなり美術館に行って当日券で鑑賞が可能です。
ただ土日や会期後半にはかなり混雑するでしょうから、事前にオンラインで購入することをおすすめします。
チケット料金
一般 1,800円
大学生 1,200円
高校生 700円
ハニワと土偶の近代展の関連番組放送予定
主催にはNHKが入っているので、今後ハニワと土偶の近代展関連の放送があると思われます。
新しい放送予定は分かり次第追記修正します。
テレビ放映後は特に混雑が予想されますので、なるべく早めに足を運んだほうが良いでしょう。
ハニワと土偶の近代展の混雑予想
タイトルに「ハニワと土偶」といありますが内容は近現代の日本の美術を独自の視点でまとめた展覧会です。内容について知られるほどに混雑しそうです。
空いていそうな日を狙うなら天気の悪い日、あとは夜間開館(金土は20時まで開館)もいいかもしれません。
というのもテレビ放映のあとは尚更ですが、テレビを熱心に見ている年齢層の高め世代の方が多いので、午前中は通常の国立近代美術館に比べると人は多めかもしれません。
この傾向を逆手にとって、むしろ遅い時間の方が、若干人は少なくなるのではないでしょうか。
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ハニワと土偶の近代展後のランチとコーヒーブレイク
近代の日本の美術を振り返る濃密な展覧会なので、鑑賞後はちょっと休憩またはランチをしたくなります。
東京国立近代美術館にはL’ART ET MIKUNI/ラー・エ・ミクニという仏レストランがあるのですが、三國シェフのフレンチレストランなので、コースのランチなど美味しい料理の提供だけでティータイムの営業はやっていません。
ちなみにコースのランチは3,300円(パスタ)、4,800円、6,500円、9,000円の3種です。
6500円と9,000円のコースは要予約、4,800円のコースは予約可、3,300円のコースは予約不可です。
営業時間はランチが11:30–15:00、ディナーが17:30–21:00。美術館の休館日に合わせて月曜は定休日です。
▲美術館の竹橋駅側の横にある休憩スペースには椅子とテーブル、飲み物の自動販売機があります。食べ物の販売はありません。
気持ちの良いスペースです。
東近美は、屋外の休憩スペースで自販機の飲み物を買って休むか、三國シェフのフレンチレストランのコースか、の2択しかないのがちょっと困りますね。
▲東京国立近代美術館は、北の丸公園と皇居に囲まれており、大都会なのですが近隣に飲食店は皆無です。
一番近いのが竹橋駅上の毎日新聞社が入るパレスサイドビルです。パレスサイドビルは1階と地下1階にレストラン街がありスターバックスコーヒーやドトール、プロントなどコーヒーチェーン店も入っています。
また、それだけでなくレストランや居酒屋もあります。
赤坂飯店の本店や昭和の香り漂うタカサゴなどたくさんのレストランが入っているのでランチにも困りません。
会期中は観覧券(半券可)を提示すると割引などのサービスが受けられる「チケットサービス」も行われています。
しかし!注意が必要なのは、パレスサイドビルの飲食店はほとんど日曜祝日定休です。
スターバックス、ドトール、プロントも日祝は休みです。
店によっては土曜も休みです。パレスサイドビルのレストラン街の定休日・営業時間はこちらで確認!
MOMATコレクション展も見よう
ハニワと土偶の近代展は濃度が濃いので性根尽き果ててしまうかもしれませんが、上階の2階、3階、4階で開催されているMOMATコレクション展もハニワと土偶の近代展のチケットで鑑賞することができます。
原田直次郎の《騎龍観音》、和田三造の《南風》といった日本の近代絵画の代表作で重要文化財にも指定されている作品が展示されています。
さらに「モデルたちの生誕・没後数十年」、「シュルレアリスム100年」それにハニワと土偶の近代展にも作品が展示されていた芥川(間所)沙織の生誕100年を記念する「生誕100年 芥川(間所)紗織」といった小特集も開催されていますから見逃せません。
さらに2Fのギャラリー4では「フェミニズムと映像表現」という展覧会も開催されています。ダラ・バーンバウムや塩田千春といった女性アーティストたちのヴィデオ作品が上映されるタイムリーな企画
ハニワと土偶の近代展の鑑賞後少し一休みしたら是非上階も鑑賞しましょう。
現在開催中のコレクション展とフェミニズムと映像表現展、それと過去のコレクション展についてはこちら▼
東京国立博物館の特別展「はにわ」
ハニワと土偶の近代展とほぼ同時期に上野の東京国立博物館ではその名もズバリな「はにわ」という特別展が開催されています。
群馬県太田市で出土した「「埴輪 挂甲の武人」」が国宝に指定されて50周年を記念しての展覧会で全国各地から選りすぐりの埴輪約120件が集結する大規模なはにわ展です。
開催会期は2024年10月16日(水)から12月8日(日)まで。会場は東京国立博物館 平成館です。
詳しくは公式サイトをどうぞ▼
基本情報
ハニワと土偶の近代
会期:2024年10月1日(火)~ 12月22日(日) 開館時間:10:00 – 17:00(金・土は20:00まで) 休館日:月曜日(10/14、11/3は開館) チケット料金:一般 1,800円、大学生 1,200円、高校生700円、中学生以下無料。 会場:東京国立近代美術館 住所:千代田区北の丸公園3−1MAP アクセス:東京メトロ東西線「竹橋駅」 1b出口より徒歩3分、東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」4番出口より徒歩15分、東京メトロ半蔵門線・都営新宿線・三田線「神保町駅」A1出口より徒歩15分 |