長野県上田市にある上田市立美術館と上田市交流文化芸術センターが入る文化施設サントミューゼは東京都現代美術館の設計などで知られる柳澤孝彦の設計です。
サントミューゼは大きな敷地の中を円周300mの大回廊が伸びやかに中央に広がる芝生広場を囲み、「ハコモノ」と揶揄される地方の文化施設にありがちな巨大な建築物ではなく水平導線の低層建築です。
柳澤孝彦
東京藝術大学卒業と同時に竹中工務店に入り、28年間勤務の後に独立しました。独立したのが51歳の時ですから、最初から独立志望ではなかったのかもしれません。
1995年開館した東京都現代美術館の地下にある水と石のプロムナードは、サントミューゼや東京オペラシティに通じる親水施設です。▼
前述の東京都現代美術館やサントミューゼだけではなく、真鶴町立中川一政美術館、郡山市立美術館、窪田空穂記念館、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館、三鷹市芸術文化センター、さいたま文学館・桶川市民ホール、奥田元宋・小由女美術館、一葉記念館、ハンセン病資料館、新佐久教育会館など各地の美術館、記念館などの文化施設を数多く手掛けています。
中でも初台にある東京オペラシティと同施設内の新国立劇場は、柳澤孝彦の代表作とも言えるでしょう。
設計の柳澤孝彦は残念ながら2017年に亡くなりました。その後2019年にサントミューゼを共同設計した梓設計が柳澤孝彦+TAK建築研究所の株式を全株取得しているので、現在は梓設計の傘下になっているようです。
正面エントランスから上田市交流文化芸術センター側を望む▼
平面図
平面図左が大ホール、大スタジオ、小ホールを有する上田市交流文化芸術センター、平面図右側で2階にあるのが上田市立美術館です。
この二つの施設を繋ぐのが円形の長い回廊です。芝生広場を囲むようにして配置された回廊にはエントランスが3か所、芝生広場への出入口が2か所配置されています。▼
円形の長い回廊は、全ての機能空間の出入口が直結するクラスターシステムが取り入れられ、その出入りのし易さと開放性のある構成で見通しの良さ、そして市民が施設利用を身近に感じる親近性を高める効果を狙っています。▼
二つの施設
赤く塗装された上田市交流文化芸術センターに一番近いエントランスで、後方に見えるのがホールの建物です。
青く塗装されているのが上田市立美術館に近いエントランスです。▼
回廊によって繋がっているのがよくわかります▼
上田市美術館の建物です。展示室は2階にあります。
モノトーンの床とランダムに塗装された壁面の縦縞が呼応するデザインです。▼
芝生広場側に添って立っている小部屋は、創作工房としての機能空間であるスタジオや、会議室、和室、アトリエ、子どもアトリエなどです。 ▼
親水のプロムナードです。▼
緊急事態宣言で遠出はできないという都民の方も多いと思います。
サントミューゼを訪問する前に横尾忠則GENKYOやマークマンダース 保管と展示、MOT アニュアル2021 と「JOURNALS 日々、記す」など見応えある展覧会を開催している柳澤孝彦設計の東京都現代美術館にまずは行ってみるのもいいかもしれません。
柳澤孝彦の代表作である東京オペラシティと新国立劇場見学をするのならオペラシティアートギャラリーにも立ち寄って加藤翼「縄張りと島」展もおすすめです。
サントミューゼ
長野県上田市天神3丁目15−15 MAP
柳澤孝彦の代表作東京オペラシティはこちら▼