20世紀の建築や工業デザインに大きな影響を与えた20世紀デザインの巨匠で、自らを「構築家/constructeur」と称したフランス、ナンシー出身のジャン・プールヴェの大規模展覧会が東京都現代美術館で始まりました。(会期終了しました)
展覧会では、スタンダードチェアなどの椅子やテーブル、照明から建築に至るまでその代表的な作品の数々を体系的に鑑賞することができます。
ジャン・プルーヴェのデザイン論、建築論は専門家にお任せして、このブログでは、ジャン・プルーヴェ展に行く前に知っておきたい情報をまとめてみました。
PR展覧会構成
展覧会会場は、東京都現代美術館の1階と地下2階の2フロアです。
出品されているのは、家具類114点と額装28点で計142点と4本の映像が流れています。
展覧会風景は、是非動画を参照ください。
1階
1階の会場の平面図です。▼
撮影禁止のイントロダクション
1階のイントロダクションの展示室は撮影禁止です。撮影禁止はここだけです。
イントロダクションには何が展示してあるかというと、冒頭に繊細でシャープなガラスの「コンパ展示什器」にプルーヴェの写真資料が入っています。これが本当に美しかった。展覧会の冒頭からいきなり魅了されます。
中央の展示台にはアレクサンダー・カルダーの置き式のモビール「サシェ」が置かれたテーブル「サントラル」とフェルナンド・レジェが描いたプルーヴェの椅子の絵画「コンポジション」という構成です。
壁面には、ジャン・プルーヴェの年表です。ここは読むのに時間がかかるので、ちょっと滞留しがちなゾーンです。
正面の壁面には、亜鉛メッキの食堂テーブルと丸窓が印象的なアルミのファサードパネルとライン照明の組み合わせです。
イントロダクションの展示内容でプルーヴェ展への期待は更に高まります。
4つのゾーン
イントロダクションのあとは、1:工芸から工業へ、2:椅子、3:出版物、4:ナンシーの自邸と4つの章が続きます。
展覧会風景は動画にアップされているので、ここでは主に1階展示室の動画にアップされていない壁面の額装展示を中心に掲載します。
▲「テーブルTC11」 1947年頃写真
「ダクティ タイビストチェア CD 11 」 1947年
「S.A.M.」 テーブル No.502 1951年 写真
アトリエ ジャン・プルーヴェの家具 販売用冊子 1951年▲
工芸から工業へ▲ 青焼きの額装です。青焼きって若い人は知らないかもしれませんが、かつて主流だったジアゾ式複写技法のことです。日本でも90年代までは図面は青焼きでした。
「シテ」チェア(1932年)から「コンフェレンス」チェアNo. 355(1954年)まで椅子のデザインの変遷がまとめられてみられる2章の「椅子」の展示。
3章の出版物、4章のナンシーと続き会場は地下へ
PR地下2階
地下2階の平面図です。▼ 5章ジャン・プルーヴェの工場、6章アフリカに向けて、7章組立・解体可能な建築と建築部材ののち、最後に吹き抜け空間にはジャン・プルーヴェとピエール・ジャンヌレの共同設計「F 8×8 BCC組立式住宅」1942年がお出ましです。
ピエール・ジャンヌレとの協働
地下2階の展示のメインは、ジャン・プルーヴェとピエール・ジャンヌレとの協働作品、F8×8 BCC 組立式住宅 ペダリウー(フランス) 1942年です。
残念ながら中に入ることはできません。
中には入れませんが、俯瞰で見ることが可能です。▲ 実際のF8×8 BCC 組立式住宅 にはちゃんと屋根がついていますが、今回は上からの視線を意識して、あえての屋根無し展示です。
1階の展示室から地下へ降りる前に通る通路から眺められます。
PR4本の映像
地下の展示室には4本の映像が流れています。
地下展示室入り口で投影されている「CNAM (フランス国立工芸院)での講義」1964年 6分▲
5章で投影されている映像「マクセヴィルのデザイン棟 (1948年) 」2022年 3分53秒▲
7章の「メトロポール 住宅 (1949年)チュイルリー公園(パリ)での再組立 」2011年 2分45秒
この映像はタイムラプスによる再組立の様子がモニターで流れています。
最後は「ジャン・プルーヴェ:建築とその時代」1975年 60分05秒 ▲
4本の映像はトータルで70分ほどになります。最後の60分の映像は椅子が座れる人数が限られています。座れなくて1時間ずっと立ってみるのはしんどいなぁという方に朗報です。
実は全く同じ映像がミュージアムショップの奥で流れています。こちらは誰もいませんでした。ここならゆっくり座って鑑賞することが可能です。▲
もしも、会場内がいっぱいだったらこちらでどうぞ。
映像が流れている場所は2階のサンドウィッチの下、ミュージアムショップ奥です。▲
PR
唯一座れる椅子
展示されているものは全て、座ることも触ることもできません。とにかくただただ見るだけです。当たり前ですが。
しかし!たった一つだけ実際に座ることができる椅子がありました。それは最後の映像の部屋の椅子(ベンチ)です。
この映像観賞用のベンチは、薄鋼板、鋼管、オーク材でつくられた「折りたたみ机付き講義室用ベンチ /国立ジョワンヴィル体育センター(フランス)」1953年です。▲
もちろん、腰掛けて映像を鑑賞しましたが、座面の幅が狭めで決して座り心地の良いものではありませんが、座面の小口の丸みとか、ベンチの足とか映像を鑑賞しつつもしっかり観察しました。
この映像は展示室外でも鑑賞可能と前述しましたが、とりあえず、映像を全部ここで鑑賞するかどうかは置いといて、このベンチには是非座ってみてください。
鑑賞時間の目安
映像だけで70分です。読み物も少なくはありません。展示品も大きな構造体から、小さい模型まであります。じっくり鑑賞をする人は2時間、映像を端折るのであれば1時間というところでしょうか。
前澤友作コレクション
この展覧会は東京都現代美術館と公益財団法人現代芸術振興財団の主催です。公益財団法人現代芸術振興財団というのは、あのZOZO創業者で最近宇宙にも行った前澤友作氏の財団です。財団の事務所がピラミデにあるので、ご存知の方も多いでしょう。
というわけで、今回出品されていたプルーヴェの貴重な品々のうちF8×8 BCC 組立式住宅を含めた50点ほどが前澤氏のコレクションです。
F8×8 BCC 組立式住宅は、中の家具も(手前のカフェテリアチェア1脚をのぞく)全部前澤友作コレクション▲
ですからこの展覧会は、ほぼパトリック・セガンコレクションと前澤友作コレクションで構成されています。ちなみにパトリック・セガンは、ジャン・プルーヴェなどのヴィンテージ家具を主に扱うパリのギャラリーのオーナーです。
4点出品されている”個人蔵”の中に、パトリック・セガンと共に展覧会企画にクレジットされいてる八木保氏やトークイベントに登壇する片山正通氏のコレクションがあるのではと推察されますが、全体のボリュームの1割にも満たない数です。
で、実は、2016年10月にこの展覧会の前哨戦とも言える「ジャン・プルーヴェ 組立と解体のデザイン」展がフランス大使公邸において、たった3日間だけ開催されています。
この展覧会も、パトリック・セガン協力のもと、現代芸術振興財団が主催でした。おそらくこの展覧会をもとに今回の展覧会の企画がスタートしたと思われます。
2016年の展覧会の様子がこちらの動画で参照できます。▲
はっきり言って、こっちの展覧会の方が数倍かっこいいです。F8×8 BCC 組立式住宅前には、協働したピエール・ジャンヌレのPH29が置かれています。泣ける演出!
しかし前澤氏すごいなぁ。莫大な資産をこのような文化的価値のあるものに使うというのは、我々庶民にとっては羨ましいだけでなく、とっても有難いことです。
現代美術や陶芸品、そしてヴィンテージ家具まで幅広いコレクションを所有する前澤氏のおかげで、プルーヴェの貴重な家具が日本にたくさんあるかと思うと嬉しくなりますね。
PR
ミュージアムショップ
今回の展覧会の図録は8月末以降刊行予定で現在は予約受付中です。
232ページで税込3000円。NADiffのHPでも予約を受け付けています。
関連書籍は絶賛販売中です。▲
展覧会コラボパフェ
美術館の地下にあるレストラン100本のスプーンでは、ジャン・プルーヴェ展コラボスイーツ「パフェ・ポルティーク」が展覧会期間限定で食べられます。
ハーフサイズにしても構造体クッキーはつくそうです。
PR
学生無料デー
2022年8月30日(火)~ 9月2日(金)の4日間、中高生・専門学校生・大学生は「ジャン・プルーヴェ展」が無料です(チケットカウンターで学生証の提示が必要です)
基本情報
2022年7月16日(土)ー10月16日(日)会期終了
10:00-18:00 月、7/19、9/20、10/11休(7/18、9/19、10/10開館)
一般 2,000円 / 大学生・専門・65歳以上 1,300円 / 中高800円 / 小学生以下無料 予約優先チケットはこちら
江東区三好4丁目1−1 MAP
アクセス:東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2番出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線「清澄白河駅」A3番出口より徒歩13分
同時開催の展覧会はこちら▼
東京都現代美術館MOT アニュアル2022「私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」とMOT コレクション「コレクションを巻き戻す2nd」
デンマークのヴィンテージ家具がいっぱいのカフェ情報▼
Auto Amazon Links: プロダクトが見つかりません。