生きものと共に制作した作品を多く発表し、最近ではビーバーが齧った木材を彫刻に見立てた「彫刻のつくりかた」が評判になったコンセプチュアルなアーティスト、AKI INOMATAの展覧会「昨日の空を思い出す」が神宮前の現代美術ギャラリー「MAHO KUBOTA GALLERY(マホクボタギャラリー)」で開催されています。
アンモナイトとタコを進化の時を超えて出会わせる「進化への考察」、ヤドカリが世界各地の都市をかたどった「やど」へと引っ越しを続ける《やどかりに『やど』をわたしてみる》などが代表作ですが、今回は自然と人間がテーマです。
コロナ渦における行動制限が日常化した中で自室の窓から空を眺め、「昨日と同じ今日は来ない」と強く感じたことが作品の着想になっているそうです。
「昨日の空を思い出す」展ではグラスの中に昨日の空模様を眺めることができる作品や、グラスの様子を記録した映像や写真の作品が展示されています。
異なる時間、異なる場所の空を3Dや写真で鑑賞しながら今日という日を感じさせてくれる展覧会です。
PR「昨日の空を思い出す」
MAHO KUBOTA GALLERYでの「昨日の空を思い出す」展、その出展作を紹介します。
▲ギャラリーに入って真っ先に目にするのがこの水が入ったグラス。
これがこの展覧会のタイトルにもなっている作品「昨日の空を思い出す」です。
わざわざ窓際に置かれているのは太陽光によって作品の美しさが目立つのと、昨日の空と今日の空を対比させたいがためだと思います。
そのために西日がしっかり差し込むよう、ギャラリーのオープン時間も通常より繰り下げて午後2時からになっています。
▲グラスを満たす水の中に浮いているのが ”昨日の” 空に浮かんでいた雲の形です。
ある液体を使い3Dプリンタで制作しているそうです。
▲”昨日の空” なので展示される作品は毎日変わります。今見ているのは昨日の空。そして今日の空が3Dプリンタで再現され明日展示というように永遠に循環していくのです。
なお雲以外は単なる水なので鑑賞者が口をつけて飲むことも可能です。
▲これが3Dプリンタ。
毎夜、その日の空をデジタルデータ化し、AKI INOMATAが3Dプリンタでしこしこ制作しているのだと思います。
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写真と映像作品
「昨日の空を思い出す」はパンデミックの時期から始まったプロジェクトで今も現在進行形で作品の制作が続けられています。
会期中毎日、新しい作品に入れ替わりながら展示されていきますが、過去のグラスの写真や映像も展示されています。
▲これは2022年10月30日の岡山の空を再現したもの。
女性が作品に口を付け中の水を飲んでいます。
▲左の写真には2022年の10月の岡山の空、窓際に見えるグラスの中には東京の昨日の空、そしてギャラリーの外には東京の今日の空が広がっています。
ぜひ天気の良い日に訪れて、奇跡的な3つの空の邂逅を鑑賞してみてください。
▲展示されている写真は2022年のものが8点。
ギャラリースペースの中央にはモニターが設置され2分33秒の映像作品が上映されています。
「昨日の空を思い出す」展の様子はこちらのInstagramでも紹介しています。
展覧会のポイントや写真撮影
「昨日の空を思い出す」展では写真も動画も撮影可能です。もちろん、フラッシュや三脚、自撮り棒などはNGです。
またSNSなどで公開する際はハッシュタグ #thinkingofyesterdayssky をお忘れなく。
陽を浴びて輝くグラスはSNS映えもして美しいのですが、その中に収まっているのが ”昨日の空” というだけでとてもヘビーな意味を持つ作品になっています。
会期は2023年9月16日までと一見長いのですが、実際にオープンしているのは10日余りということで訪問できる日が限られてしまいます。できれば天気の良い晴れた日に訪問したいので、カレンダーと天気予報をにらめっこしてベストな予定を組んでみてください。いま東京で見るべき展覧会の一つです。
基本情報
「昨日の空を思い出す」
14:00 – 19:00 休廊日:日・月・祝日 入場無料、予約不要 MAHO KUBOTA GALLERY 渋谷区神宮前 2-4-7 MAP |