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アート好きにも建築好きにも刺さる!21_21 DESIGN SIGHT クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門” を観に行く前に読んでおこう!


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包まれた凱旋門

ヴァレーカーテンやポンヌフ、ライヒスターク、ゲート、そして日本の茨城が舞台となったアンブレラなど膨大な時間と費用をかけてとんでもなく壮大なプロジェクトを手掛けてきたクリスト&ジャンヌ=クロード/Christo & Jeanne-Claude夫妻の展覧会が六本木の 21_21DESIGN SIGHT で開幕しました。

今回の展覧会は主に、コロナのため1年延期ののち2021年9月に2週間だけ公開されたパリ凱旋門プロジェクトに焦点を当てた展覧会です。

展覧会の開幕日となった6月13日は、夫妻でありプロジェクトの共同製作者でもあるクリストとジャンヌ、2人の誕生日でもあります。これは明らかに意図的な日程ですね。

そんな2人の誕生日でもある展覧会初日に早速行ってきました。

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クリスト&ジャンヌ=クロード

1935年6月13日の全く同じ日にブルガリアでクリストが、モロッコでジャンヌが誕生します。もうここから運命的な二人ですが、出会いは1958年のパリ、二人が23歳の時です。その後二人は結婚し、共同制作者となるのです。

私が最初にクリストを知ったのは、日本も舞台となったアンブレラプロジェクトの時(1984-91)です。ただ、その頃はクリストだけの名前で活動していたと記憶しています。

もちろん、その頃から妻ジャンヌはクリストのプロジェクトには欠かせない存在でしたし、常に一緒に行動していました。

日本に来日するときも二人は一緒でした。ただし、同じ飛行機には乗らずに来日するのです。なぜなら、もしも飛行機事故などがあった時に二人同時に何かあった場合、プロジェクトは中断してしまいます。どちらかだけでも、生きていればなんとかプロジェクトの進行は可能です。

そのような理由で、別々の飛行機に乗って来日していました。物凄いリスクヘッジだなと当時感心したものです。ですからその頃から、ジャンヌはクリストと同等の共同製作者だったわけです。

いつから2人の連名になったのかが定かではありませんが、私が持っている作品集は「クリスト」一人だけが明記された作品集です。

日本で開催されたクリスト展の際に、こちらからお願いしたのではなく、クリスト自らスタッフ全員の名前を聞いてサインをしてくれたものです。(個人名が出ているので消しました。)そういうところが世界中にファンがいる理由の一つでもあります。この本は当時も今も私の大切な大切な1冊です。▼

サインも「Christo」だけですね。ジャンヌも横にいたのですけれどね。

残念ながら、ジャンヌが2009年に、クリストが2020年に亡くなっているため、今回の展覧会の主題である凱旋門プロジェクトは2人とも見ていないのです。

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展覧会構成

クリスト&ジャンヌ=クロードの作品も建築の展覧会同様に、プロジェクトが最も重要な作品であるにもかかわらず、実際のプロジェクトそのものは展覧会で見せることは不可能というジレンマがあります。

プロジェクトはたった2週間

凱旋門プロジェクトに限らずクリストとジャンヌの作品は一時的(Temporary)なもので、展示期間の2週間ほどで撤去されてしまいます。ですからいかなる展覧会にも、彼らの作品そのものは出品されることはありません。そもそもパリから凱旋門を借りてくる訳にはいきませんしね。

1961年から構想し続けてきた ”パリの凱旋門を包む” 「LʼArc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961–2021(包まれた凱旋門)」は、2020年春に実現予定でしたが、コロナで延期となり2020年5月プロジェクトを見ることなくクリストが亡くなります。

翌年クリストの遺志を継いだスタッフが構想から60年の月日を経て2021年にようやく実現するのです。構想に60年を費やしたプロジェクトが展示されたその期間は2021年9月18日から10月3日までのたった2週間です。

ただ、クリストは常に”儚い”(ephemeral)という言葉ではなく自らの作品を”一時的”(Temporary)と表現していました。

凱旋門プロジェクト実物大モックアップを前に梱包の最終確認をしているクリストの後ろ姿がなんとも泣ける。この後クリストはこの世を去ってしまいます。▼

そんなクリストとジャンヌの今回の展覧会で、一体何が展示されているかというとプロジェクトの模型、写真、映像、ドローイングなどです。

ドローイング

展覧会ではクリストが描く凱旋門プロジェクトの大小のドローイングを見ることができます。ちなみにスケッチやドローイングはクリスト1人で制作しているのでサインはクリストのみになっています。

クリスト&ジャンヌ=クロードの壮大なプロジェクトにはとんでもない時間ととんでもない費用がかかります。

その膨大な費用は、クリストが描くドローイングやスケッチなどの作品を販売して得た資金が充てられます。つまり端的にいうと全てプロジェクトは自費なのです。

2人のプロジェクトはスポンサーなどをつけることは一切ありません。確かにスポンサーをつけて、銀色の布に包まれた凱旋門に大企業のロゴが入ってしまうほど不粋なことはありません。スポンサーになってもらうということは、いかなる要望も拒否できなくなることを意味する訳ですから。

スポンサーに頼ることなく全ての費用を自分たちで賄うクリスト&ジャンヌ=クロードにとって、ドロイーングやスケッチはプロジェクトを実現する上で欠かせないものです。

凱旋門の布

会場には実際に凱旋門を包んだ銀色の布を見ることができます。▼

赤いロープも実際のもの。これが思ったよりも太くてびっくりしました。▼

これら布は実際に凱旋門を包んだ布そのものではなく、その時に余った布だそうです。パリでは布に触ってもOKでしたが、今回は感染症対策もあり、会場内のものは全て触れることはできません。

展覧会の詳細は動画を参照ください。▼

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展示映像の全て

今回の展覧会では映像が重要な要素です。本当はパリに渡り実際の凱旋門を目にすることができればそれ以上のことはありません。しかし、すでにプロジェクトは終了し、本物を見ることは叶いません。

代わりに色々な視点の映像を鑑賞することができます。

映像は全部で10点あります。

冒頭にモノクロの初期のオブジェ作品のスライド映像(右)、その横にこれまでのプロジェクトのスライド映像(左)

ドローイングを制作するクリストの映像と凱旋門プロジェクトのドロイーング。

クリストのドローイングって当然プロジェクト前に描かれているのですが、実際のプロジェクトそのものなんですよね。これが本当にすごい。▼

凱旋門についての縦型モニターのプロローグ映像▼

凱旋門の模型の横で流れる銀の布や赤いロープの制作の様子の映像。

実際のプロジェクトは期間中全世界に生中継されていたので、結構見ていたのですが、布やロープの製造過程や布のドレープの事前セッティングの様子は初見だったのでとても見応えがありました。▼

実際に凱旋門を包む作業映像▼ これも食い入るように見てしまいました。ものすごい高度なことしてたんですね。

完成した凱旋門プロジェクト映像▼

関係者のインタビュー映像(大)凱旋門プロジェクトのデイレクターでクリストの甥であるヴラディミール・ヤヴァチェフ氏も出てきます。▼

関係者のインタビュー映像(小)▼

最後にコンクリート壁のコーナーにちょっこりあるのが、クリスト&ジャンヌ=クロード2人の姿です。▼

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鑑賞時間の目安

映像が多いのでしっかり見ると2時間は必要です。私は2時間半ほど滞在しました。でも、そんなに時間が経っているとは思いませんでした。そのくらい映像は引き込まれるし、あっという間です。

大きい映像の前には椅子がありますし、記録映像もインタビュー映像もループで流れています。どの映像も興味深いので全部鑑賞しました。

これからいく方は2時間は予定しておいた方がよいです。

スペシャルユニフォーム

パリの凱旋門プロジェクトの映像にもちらちら写っていますが、プロジェクトには同じユニフォームを着たボランティアスタッフが鑑賞者に説明をしたり、凱旋門を包んだ布のサンプルを渡したりしています。

今回21_21の会場にもパリと同じユニフォームを着た展覧会スタッフがいます。このユニフォームはクリスト夫妻と懇意にしていた三宅一生デザインのものです。

パリではウエストポーチに包んだ布のカットサンプルが入っていて希望の人に渡すシステムでした。残念ながら日本ではサンプルの配布はしていません。▼

トップスは赤、白、青でパリの国旗トリコロールカラーの3色。それ以外はみんな同じです。靴はアメリカのオールバーズ(Allbirds)の白。オールバーズは個人的にも5足ほど持っており、その履きやすさは実証済みです。カーボン・オフセットゼロを目指すなどエコに対する意識の高いブランドなので採用されたのでしょう。

トップスが白、青、赤のスタッフが同時に写っているのがお分かりでしょうか。▼

展覧会前に21_21主催で開催されたクリスト展のオンライントークで、パリのボランティアの方々の活動についても触れていました。

その時に気軽に話しかけて色々聞いてみてOKと言っていたので、ユニフォームについて聞いてみました。おまけに写真も撮らせてもらいました▼

背中のポケットにの中には取手があってくるりと全体を中に入れてバッグになるデザインだそうです。▼

クリストと一緒に仕事をしていた日本人スタッフで今回の展覧会でも特別協力をされている柳正彦氏からレクチャーを受けているので、わからないことや質問があったら展覧会スタッフに積極的に聞いてみましょう。

ミュージアムショップ

通常はエントランスであるミュージアムショップですが、今回はGALLERY3がミュージアムショップになっていました。関連書籍の販売の他に三宅一生デザインのバックや凱旋門シャツなどが販売されています。

クリストとジャンヌの関連書籍は多くが絶版になっていたりでAmazonで購入できるものは英語版です。

それでも彼らの世界を知るには良い資料だと思います。

ミュージアムショップでも何冊かは購入可能のようです

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撮影について

写真も動画もOKですが、三脚・フラッシュはNGです。

会場内のものは全て触れることはできません。

21_21の建築は言わずもがなですが、安藤忠雄の設計です。またクリスト&ジャンヌ=クロードの作品は多分に建築的要素が多いプロジェクトです。実際にプロジェクトには、構造の専門家や建築の専門家がたくさん参加しています。

日本が誇る安藤忠雄建築空間でクリストとジャンヌの壮大なプロジェクトの記録を目に焼き付けてきました。

アート好きはもちろんのこと、建築好きにも刺さる展覧会です。

展覧会基本情報

クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”

2022年6月13日(月)- 2023年2月12日(日)火と12月27日 – 1月3日休、10:00 – 19:00 6/13-17は13:00-19:00

一般1,200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料

21_21 DESIGN SIGHT

港区赤坂9丁目7−6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン MAP

アクセス:都営大江戸線六本木駅、東京メトロ日比谷線六本木駅、 千代田線乃木坂駅より徒歩5分

関連企画

表参道のme ISSEY MIYAKE / AOYAMAで特別展示 写真家ウルフガング・フォルツがみた「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」を開催しています。

me ISSEY MIYAKE / AOYAMAで特別展示 写真家ウルフガング・フォルツがみた「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」

ショップの2階が会場です。▲

クリスト&ジャンヌクロードのプロジェクトを50年以上に渡り撮り続けてきた写真家ウルフガング・フォルツの写真展です。

2人のプロジェクトは常に期間限定で短い期間ですから記録が重要になってきます。

そのプロジェクトの記録を長年に渡って担ってきた写真家が撮った2人が亡き後のプロジェクト凱旋門の写真です。me ISSEY MIYAKE / AOYAMAで特別展示 写真家ウルフガング・フォルツがみた「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」会期:2022年9月15日(木)ー 2023年2月12日(日)

11:00-20:00  12/31-2023.1/3休 入場無料

me ISSEY MIYAKE / AOYAMA

東京都港区南青山4-21-24


造形作家の関口光太郎によるワークショップ「みんなの形で凱旋門を包もう(エッフェル塔も!)」 (終了しました)

新聞紙とガムテープを使って自由な「形」をつくり、それらをミッドタウン内に設置された凱旋門を包むという企画。

ガムテープで作ったクリスト&ジャンヌ=クロードがそっくりすぎて笑った。▲

これが凱旋門▲

このプログラムは2022年8/4(木) – 11(木)11:00 – 15:00 東京ミッドタウンプラザB1無印良品前

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