照明型オブジェ
没後30年を迎えた2021年、倉俣史朗が手がけた幻のオブジェ「SAMBA-M」がクラマタデザイン事務所監修の元に復刻されました。
「SAMBA-M」は1988年にAXISギャラリーで開催された『”In Spiration”展』で発表されたワイングラス型の照明のオブジェです。
当時の最新テクノロジーだった赤色発光ダイオードをワイングラス型のガラスで包みました。倉俣史朗がパーティの来場者を驚かせるためにデザインしたというだけあり、点灯させると注いだシャンパンが赤く光るユニークなデザインです。
1988年当時の技術では製作が非常に難しく世に出たのはほんのわずかの数量でした。今回は現代の最新技術を用いた復刻版です。当時よりも使い勝手が大幅に向上し価格も手が届く金額になりました。
展覧会
復刻した「SAMBA-M」のお披露目の展覧会「復刻・倉俣史朗Ⅱ」が青山のライトボックスギャラリーで6/25-27の3日間だけ開催されました。▼
会場に入ると「How High the Moon / ハウ ハイ ザ ムーン」の上に「SAMBA-M」が赤く怪しげな光を放っています。背後には篠山紀信撮影の倉俣史朗のポートレートが展示されています。▼
自分がデザインした椅子やテーブルと一緒に写真におさまる倉俣史朗▼
3つ並べられた「SAMBA-M」。テーブルトップの映り込みが美しいです。壁側のグラスには水が入っていました。▼
ちょっと厚みがあるかなってくらいで、照明が仕込んであるとは思えないフォルムです。最新技術できっと当時倉俣史朗が実現したかったグラスにかなり近づいてるのではないでしょうか。▼
販売
復刻された「SAMBA-M」は購入可能です。価格は税込29,700円で現在予約受付中。納品は7月中旬予定。倉俣作品をコレクションしたくてもなかなか難しいのが現状です。そもそも当時の家具は入手困難ですし、復刻版でも高額でハードルが高いのですが「SAMBA-M」はサイズ的にも価格的にも手が届きます。
消灯している「SAMBA-M」の横には同時期の1988年に発表されたスプーン型の照明「水素の夢」が。▼
左側に置いてある椅子は安藤忠雄が1985年に設計した京都下鴨のカフェレストトラン、モン・プティ・シュのためにデザインされた椅子「Apple honey/アップルハニー」です。この椅子も復刻されています。▼
手前の椅子は「Apple honey/アップルハニー」と同時期の1985年デザインの「Sing Sing Sing / シング シング シング」です。名前は「How High the Moon / ハウ ハイ ザ ムーン」同様にジャズの名曲を由来としています。この椅子も復刻されました。▼
会場内では生前の倉俣史朗のインタビュー動画が流れていました。ちょうど先日埼玉県立近代美術館 「コレクション4つの水紋」に出品されていたミスブランチについて話しているシーンです。▼
展覧会は終了してしまいましたが、「SAMBA-M」の復刻版はこれから世に出るものなので注目していきたいです。
また、香港の美術館M+では2004年に閉店した倉俣史朗デザインの新橋のお寿司やさん「きよ友」が移築されそっくりそのまま再現される予定です。これは公開されたら是非観に行きたいです。
きっとそう遠くない未来に都内の美術館でも倉俣史朗の展覧会がみられるはずです。