静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
2022年にそれまでの世田谷区岡本から丸の内へ移転してきた「静嘉堂文庫美術館(せいかどうぶんこ)」で《黒の奇跡・曜変天目の秘密》展が開催されています。
「静嘉堂」は三菱第二代社長の岩﨑彌之助が設立し、その息子第四代社長の岩﨑小彌太によって拡充された文庫(図書館)と美術館です。
静嘉堂@丸の内が入るのは同じ三菱グループの明治安田生命が本社を置く「明治生命館」。1934年竣工の歴史ある建築で重要文化財の指定も受けている名建築です。
(丸の内での静嘉堂文庫美術館は通称として「静嘉堂@丸の内」と名乗っているようで、本記事でもその表記を使います)
設立者の岩﨑彌之助は丸の内に美術館を建設することを夢見ており、100年の歳月を経てその夢がようやく実現したのです。

その静嘉堂のコレクションは現在国宝7点、重要文化財84点、およそ20万冊の古典籍と約6500点の東洋古美術品です。
このうち古典籍は静嘉堂文庫に収められていますが、事前予約制で一般公開はしていません。
丸ノ内に移転してきたのは静嘉堂文庫美術館のみで、世田谷区岡本では引き続き美術品の保管管理・研究閲覧業務、静嘉堂文庫(書庫)と敷地・庭園の管理業務は継続しています。
《黒の奇跡・曜変天目の秘密》
静嘉堂文庫といえば曜変天目茶碗。世界中で完全な形で現存するのは3点だけという貴重な茶碗で、中でも静嘉堂が所蔵する通称「稲葉天目」は最高傑作とされています。
《黒の奇跡・曜変天目の秘密》展ではその曜変天目茶碗を中心に、工芸の黒い色彩をテーマとして、工芸品や漆芸品を紹介するとともに、曜変天目の謎や秘密にせまる展覧会となっています。
紀元前4世紀の中国戦国時代から20世紀昭和の時代までの作品69点が出品され、国宝1点、重要文化財2点が含まれています。
なお、本記事では報道内覧会で特別に許可を得て撮影しています。
展覧会は4章構成
展覧会は4章構成。
静嘉堂@丸の内はGallery1から4まで4つの展示室があり、各展示室に1章が割り当てられています。
1章 天目のいろいろ
曜変天目茶碗は中国北宋時代に作り出された「天目茶碗(てんもくちゃわん)」の一種。

▲1章では静嘉堂が所蔵する中国渡来の天目の品々が一同に会する展示です。。
写真の作品は「灰被天目 銘 埋火」。実物はもっと鮮やかな色味です。

▲これは重要文化財の「油滴天目」。
中国南宋時代のものです。
2章 黒い工芸−漆黒とつや黒鉄のかがやき
日本の工芸で「黒」といえば、漆塗りの「漆黒」や、「黒鉄(くろがね)」と呼ばれる鉄そのものを素材とする刀剣や鉄鐔などの金工品。

▲2章では漆芸品や金工品など、やきもの以外の黒い工芸品が展示されています。
3章 天目と黒いやきもの
3章は一番広いGallery(展示室)3を使い、中国古代の黒陶から宋・元時代の天目茶碗、清時代のやきものなど、黒いやきものの流れを紹介する展示になっています。

▲椀や瓶など様々なやきもの。
時代も中国戦国時代、唐時代から清の時代まで幅広いです。

▲日本では桃山時代の美濃焼、江戸時代の有田焼から昭和の河井寛次郎まで。

▲野々村仁清の「色絵吉野山図茶壺」。重要文化財です。
色鮮やかですが、その色を引き立てるような黒がポイントです。
4章 曜変天目の小宇宙
※報道内覧会で特別に許可を得て撮影しています。通常は4章の展示室内、曜変天目茶碗は撮影禁止です。
本展の最後はお待ちかねの曜変天目茶碗。世界で3点だけの曜変天目茶碗の中でも最高傑作とされる「稲葉天目」です。
茶碗の中に宇宙が閉じ込められたような不思議な色ですが、実は今なお多くの謎が残っています。

▲中国でも残っていないのに、南宋時代から現代までどのように伝わってきたのか、どのようにしたら曜変の色が生み出せるのか、曜変の虹色はどのようにして成り立っているのか。
今も多くの科学者、研究者、工芸作家たちがその謎にせまるべく研究を進めています。

▲ガラスケースの中が国宝の《曜変天目茶碗》。
静嘉堂文庫の目玉作品として年に1回は展覧会に登場しますから、すでに目にしたことがある方も多いでしょう。
今回は初めて曜変天目茶碗の高台裏まで鑑賞できるような展示方法がとられています。

▲思わず息を呑むような美しさ。
そして手の中にすっぽりと入りそうなそのサイズ。たぶん想像していた大きさよりかなり小さく感じると思います。
茶碗の内側の小宇宙の不思議さが際立つよう敢えて照明を落として展示しているようです。
ホワイエのQ&A
クライマックスの曜変天目茶碗を鑑賞したら、ホワイエのQ&Aパネルも読んでみましょう。

▲今の残る曜変天目茶碗に関する謎とその答え、あるいは研究成果に関してパネルで解説しいます。
Q&Aは全5枚。
これを読んでからもう一度展覧会をぐるっと回ればさらに作品に対する理解が深まるかもしれません。
鑑賞時間と混雑状況
全69点ですし映像作品もないので普通に回れば1時間弱。でも混雑もしていますし、気になる作品には時間をかけたいですから、全体で1時間ちょっとの鑑賞時間になると思います。
世田谷時代に比べれば格段にアクセスが良くなってから曜変天目茶碗を見られる2回目の展覧会ということで、会場は大混雑しています。
開幕してしばらくしての平日に再度訪問してみたのですが、ホワイエ中お客さんでいっぱい。展示室によっては入室待ちの行列ができていました。
GWはもちろん週末でも相当の混雑になると思います。今後TVなどマスメディアでの紹介されるとさらに混雑に拍車がかかるはずです。
写真撮影について
原則写真撮影OKです。
写真撮影ができないのは曜変天目とそれが展示されているGallery 4の室内だけ。Gallery 4内の壁のキャプションなども撮影不可です。

▲撮影に使用できる機材は携帯電話・スマートフォン・タブレット端末のカメラだけ。
デジタルカメラ、一眼カメラなどでの撮影は禁止です。
また動画撮影やフラッシュ撮影もできません。
三脚、自撮り棒(セルフィースティック)の持ち込みも禁止です。
また混雑時には撮影を禁止することもありますし、撮影に関するレギュレーションが変わる可能性もあります。現地での最新の指示に従ってください。

▲ホワイエのフォトスポットもお忘れなく。
静嘉堂@丸の内は展覧会ごとにこうしたフォトスポット用顔出しパネルを用意しています。
そう、これ観光地などでよく見かける顔出しパネルです。曜変天目の小宇宙に入り込んだ私、みたいな不思議な写真が撮れます。

▲実は隣には後家兼光のパネルも登場。
2章に刀剣「後家兼光(刀 大磨上げ無銘)」が展示されていることから刀剣乱舞ONLINEとのコラボが実現したのだそうです。
顔出しパネルは恥ずかしくても後家兼光とのツゥーショットなら平気な方も多いでしょう。
ただ4月30日(水)までの期間限定コラボです!
夜間開館と曜変ファッションとトークフリーデー
夜間開館
《黒の奇跡・曜変天目の秘密》展に行ってみたいけど週末は混んでいそうだし平日は時間が取れないし。そんな人のために毎月第4水曜日は20時までの夜間開館が実施されています。
会期中の第4水曜日は4月23日と5月28日。さらに閉幕直前の6月20日(金)と21日(土)は19時まで開館しています。
世田谷時代だったら夜間開館されても帰りの足が心配になりますが、ここは丸の内。丸の内仲通りも東京駅もすぐ近く。なんなら銀座まで歩くこともできますから美術館の後でも夕食の心配はありません。
曜変ファッション割引
なんと、曜変天目ファッションで訪れると入館料が200円割引になります。
受付で「曜変ファッションで来ました!」と声がけすれば割引になるそうです。 特に ”曜変ファッション” の定義はなくて。洋服、バッグ、靴、メイクやネイル。どこでも ”曜変” だと感じればそれで良いみたいです。
トークフリーデー
毎週木曜日は「トークフリーデー」。
美術館は普通は静かに鑑賞するものですが「トークフリーデー」では感想を語り合ったり、うんちくバトルを繰り広げたりしながら鑑賞できる日です。子ども連れでも気兼ねく訪問できます。
ミュージアムショップ
静嘉堂@丸の内はミュージアムショップもユニークな商品がいっぱいです。

▲曜変天目茶碗のようだけど形がどうも歪んでいる・・・
これが「ほぼ実寸の曜変天目のぬいぐるみ」。職人が手作りするので1日10個限定、おひとり1個限定の人気商品で、混んでいる日は午前中に売り切れてしまう人気商品です。
あの曜変天目茶碗を我が家に! しかも落としてもぶつけても大丈夫!
これで税込5,800円です。
ただし2025年7月5日(土)から税込8,800円に値上げになります。入手するなら今のうちです。

▲「ほぼ実寸の曜変天目のぬいぐるみ」を手のひらサイズにした「曜変天目ぬいぐるみ キーリング」。
こちらは税込3,600円。
特に値上げの告知はなかったのでしばらくこの価格だと思います。

▲これぞ曜変天目ファッション。ボタンダウンシャツは税込23,100円。
コットン100%の曜変天目アロハもあってそちらは税込で39,600円。

▲もう少し手頃な価格だとTシャツ。
税込で4,800円です。
こんな曜変天目ボタンダウン、アロハ、Tシャツを着ていけば曜変ファッション割引は確実ですね。
ミュージアムショップは美術館の入館料不要で利用できます。
ポイント
丸の内というアクセスも良い場所で見られる国宝と数々の工芸品。しかもその国宝があの曜変天目茶碗ということで注目度も高いですし、すでに混雑している展覧会です。
まだ曜変天目茶碗の実物を見たことがない人には絶対オススメ。神秘的な小宇宙を茶碗の中に閉じ込めた姿は一見の価値があります。
それ以外にも静嘉堂@丸の内が所蔵する名品がこれでもかと並ぶ贅沢な展覧会です。
※本記事では報道内覧会で特別に許可を得て撮影しています。
開催情報
黒の奇跡・曜変天目の秘密
会期:2025年4月5日(土) ~ 6月22日(日) 休館日:月曜日 (5月5日は開館し5月7日休館) 開館時間:10:00~17:00 入館料:一般 1,500円、大高生 1,000円、中学生以下無料 会場:静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階) 住所:千代田区丸の内2-1-1 MAP 最寄駅:地下鉄千代田線二重橋前駅 3番出口直結、東京駅丸の内南口から徒歩5分 |