写真で見て気になっていた展覧会「Margaret–少女マンガ彫刻 樋口明宏 個展」を観に恵比寿のMA2 Galleryに早速行ってきました。
樋口明宏
タイトルからして、興味津々な展覧会です。少女マンガ彫刻?!どういうこと!?
いつものギャラリーの重い扉を開けると、そこには!!!
確かに「少女マンガ彫刻」の名にふさわしい荒削りだけれど、瞳の中のキラキラはきっちりと表現されている木彫が展示されていました。
タートルネックではなく、これはあえてとっくりのセーターですね。ポーズも最高。▼
アーティストの樋口明宏は、これまでに昆虫標本に繊細な模様を描く「collection」シリーズや、壊れた仏像や使った立体作品の制作など、いわゆる「彫刻」の概念を覆すような作品を発表しています。
昆虫にしても、仏像にしても、その表現方法はとても日本的で、気を衒っているようですが、とってもオーソドックスな技法のです。組み合わせの妙というのか、ありそうでなかったものを作り出す、その独自の視点がとってもユニークで巧み。
もしかしたら、海外生活なども影響しているのではないでしょうか。距離をとって見えてきた日本とか、母国を離れることで初めて意識した自分の生まれ育った環境などなど。それらが作品制作の原動力になっているのかもしれません。
そういう意味で言うとマンガというのもとっても日本的なものです。日本的で非常に身近なモチーフを、アーティストにとって身近な技法で表現する。アーティストにとって実はとってもシンプルな行為なのかもしれません。
全部私の勝手な想像ですが。
2Dが3Dに
少女マンガ彫刻の斬新なところって、やっぱり実際の漫画は二次元の世界なのに、それが三次元となって目の前に現れることの違和感。これなんです。しかも木彫。木目もすごいし、荒削りで、どんだけ距離をとって見ても、どこからどう見ても立派な木彫なんです。
作品を目の前にするとすごい違和感なんですけれど、確かな技術力に裏打ちされた再現性の高さに、そうそう!これこれ!私が昭和の時代に目にしていた少女マンガはこれです。と妙に納得させられてしまう不思議。
これ、木彫が下手な人が手を出してはいけないやつです。二次元の少女マンガが忠実に立体化されているから、完成する世界観です。
背景があって彩色されているレリーフタイプの作品▼
Margaret
展覧会のタイトルは、「Margaret」です。あえて英語にしているのも意味があるのでしょう。カタカナで「マーガレット」だと、限りなく固有名詞になってしまいます。
昭和の少女マンガの代表格、誰もが知っている少女マンガ。例えば男装の麗人が出てくる、宝塚歌劇団でも上演されている永遠の名作とか。
テニスとか、バレーボールのスポ根もの。超絶長い演劇ものの漫画もありますね。
背景のあるタイプの作品は、彫刻刀の削り跡が劇画タッチになっていて、今にも動き出しそうです。▼
こんなに完成度高く作ってあったら、権利関係も難なくクリアできそうですが、どうなんでしょう。
勝手にお察し致します。
展示は4階まで
MA2Galleryを訪問したことのある人ならわかるのですが、ギャラリーは4階まで続きます。すべてのフロアに作品が展示されているので、4フロア忘れずに鑑賞しましょう。
最上階である4階に展示されている作品はサイズが小さめです。小さいけれどその存在感たるや、、、。▼
二次元が三次元で表現されている違和感を軽々と凌駕し、マンガからそのまま抜け出てきたように感じるのは、アーティストの技術力の高さ故だと思います。
マネキンのようなツルツルのものでデッサン力のない人がただただ立体化したら、多分それはとんでもなくニセモノになってしまって、目も当てられないものができるはずです。
彫刻家なら、簡単そうって思うけれど、ここまでそのまんまに見えるように作るって実はすごい大変なはず。
元々二次元のものが三次元になってしまった違和感はあっても、”違う!これじゃない!”の違和感は微塵もなく、むしろ”そうそう!これこれ!”な、すごく楽しい展覧会でした。すごい!
基本情報
Margaret–少女マンガ彫刻 樋口明宏 個展
2022年1月7日(金) – 2月3日(木)13:00-18:00(最終日17:00 ) 日月祝 休(火はアポイント制)
渋谷区恵比寿3-3-8 MAP