蔵前から
刀剣博物館はずっと行きたい行きたいと思いつつ先延ばしにしていて、ようやく先日意を決して訪ねてみました。最寄駅は両国ですが、私は蔵前エリア散策のついでに足をのばして行ってきました。
元々代々木にあった刀剣博物館がこの両国の地に移転してオープンしたのは2018年1月です。日本刀の専門博物館で公益財団法人日本美術刀剣保存協会により運営されています。この財団の発足は1948年で、当時は東京国立博物館内にありました。協会は刀剣・刀装・刀装具の保存・公開だけでなく鑑定・審査の実施、更に日本刀の鍛刀技術、研磨技術、刀装制作技術等の保存向上などを精力的に行っています。
両国公会堂
刀剣博物館は旧安田庭園と隣接しています。元々この場所には両国公会堂がありました。この両国公会堂と言うのは台湾で活躍した建築家森山松之助の設計で1926年竣工の円形ドームが美しい建築でした。この公会堂の解体には反対の声が多くあり、一度はブライダル産業の参入により、存続が期待されましたが、耐震工事費が想像を上回る金額だった為撤退となり、10年ほど空き家状態が続いた後、結局解体されました。建築家森山松之助は現在、聖心女子大学パレスとして大学構内で使用されている旧久邇宮邸を設計した建築家です。旧久邇宮邸は一度見学してみたいのですが、年に1度開催していた見学会も現在はコロナの為昨年から中止となっているので再開される日を心待ちにしています。
旧安田庭園
また、この博物館が隣接する旧安田庭園は実業家安田善次郎の所有で没後1922年に東京に寄付されました。この安田善次郎は、東京大学の安田講堂にも名前が残る安田財閥の祖であり、あのオノヨーコの曽祖父でもあります。安田講堂だけでなく日比谷公会堂や麹町中学校も善次郎の寄付ですが、更に両国公会堂も安田善次郎の寄付を受けて建設されたのです。
外観
前置きが長くなりましたが、刀剣博物館がこのような形になったのは、両国公会堂の建築が無関係ではないと思うからです。
設計は自身の事務所も構えている代官山ヒルサイドテラスを設計した槇文彦です。
正面入り口は出入り口周りがステンレスでその周りがぐるりとコンクリート打放しと言うファサードです。窓も少なく、ちょっと要塞ぽくて閉鎖的な印象です。
しかし、安田庭園側、すなわち裏側からの眺めはどことなく両国公会堂の円形ドームのデザインを踏襲していると言えなくもないのではと感じました。
内観
中に入ると外観の印象とは異なり、明るく開放的な印象。何より村野藤吾の八ヶ岳美術館を想起させるドレープのかかった円形の間接照明が優雅で美しいです。外観は「刀剣!」っていう硬質な雰囲気ですが、一旦中に入ると柔らかな印象なのは、円形の間接照明やパーテーションなど曲線で構成されていることと窓越しに見える安田庭園の借景の効果でしょう。円形のドレープの下は天井同様円形にテラゾーになっていて遠目から見ると水玉模様のようですごく軽やかです。
刀剣博物館の様子は動画でご覧ください
見学
美術館の展示室内は撮影禁止ですが、展示室外は撮影可能です。せっかくの訪問でしたが、時間的制約もあって展覧会は見ずに館内の見学だけにしました。
1Fはエントランスと受付、ミュージアムショップ、情報コーナー、カフェ、講堂があります。講堂以外は基本的に入ることができました。2F3Fは展示室なので階段部分のみの見学ですが、3Fには屋上庭園があってそこからお隣の安田庭園を一望することができます。これは気持ちいい場所です。両国国技館も見えます。3Fなのでそこまで高さはありませんが無料開放してくれているのは嬉しいです。
両国蔵前方面に行ったら是非立ち寄りたい場所です。
刀剣博物館
東京都墨田区横網1-12-9 MAP
9:30−17:00 月休