銀座の数寄屋橋交差点近く、ソニービルの並びにガラスブロックの壮観な建築がある。レンゾ・ピアノという建築家を知らなくてもこの建物を見たことがある人は多いはずだ。現在、手前のソニービルの建築工事が進行し、その全貌を見ることはできなくなってきている。
しかし、2017年から芦原義信設計のソニービルの解体が始まり、2001年の竣工から17年後の2018年から2023年までのおよそ5年間、数寄屋橋交差点からメゾンエルメスのガラスブロックのファサードの全面を望むことができたのだ。
すっかり数寄屋橋交差点のランドマークとして定着したように感じたが、2023年に再びソニービルの建設工事が始まり、期間限定の銀座メゾンエルメス全貌のお披露目は終了した。
銀座メゾンエルメスは、イタリアを代表する建築家レンゾ・ピアノの設計、施工は竹中工務店よって建設された。積み上げられたガラスブロックの数はなんと15,000個。ガラスブロック1個のサイズは45cm角である。このサイズはエルメスの象徴とも言えるカレこと、スカーフの90cmから着想を得たもの。ガラスブロック4個でちょうどカレ1枚のサイズとなる。
内部空間は、柱の存在感をなくすため、柱は最大限に細く設定されている。構造を担当したのは、パリのポンピドゥーセンターやシドニーのオペラハウスなど名だたる建築を数多く手がけているロンドンのアラップだ。日本では、銀座メゾンエルメスの他に関西国際空港やモード学園コクーンタワーなどを担当している。
ちなみに、関西国際空港は設計レンゾ・ピアノ、施工竹中工務店、構造アラップという銀座メゾンエルメスと同メンバーによるものだ。
銀座メゾンエルメスは、地下3階、地上11階の建物なので、当然エレベーターがある。個人的には、8・9階に位置するメゾンエルメスフォーラムというギャラリーで定期的に開催している主に現代美術の展覧会へ毎年4−5回は訪問している。もっと通っているかもしれない。
しかし、そのアクセスは屋外のビル横にあるエレベーターで直接8階に行くシステムとなっているため、(以前は店内のエルメスらしい革張りのエレベーターだったが、現在は店内エレベーターからはアクセスできない)残念ながらほとんど階段を使うことはない。
ギャラリーの階上の10階にはル・ステュディオというオンライン予約制のミニシアターがあり、1年ごとに掲げられたテーマに沿って映画の上映が行なわれている。ここでも何本も映画を鑑賞した。
このミニシアター「ル・ステュディオ」もギャラリー「フォーラム」同様に一般でも入館が可能だ。ただし、ル・ステュディオは事前にオンラインで予約をしなければならない。とはいえ、どちらも入場無料なのだから、通わない理由が見当たらない。
最後になるが、銀座メゾンエルメスの階段は、店内にもフォーラムにもある。フォーラムの階段は8階から9階へ向かう内階段だが、店内の階段はガラスブロックに則した位置にあり、その階段の横顔をガラス越しに確認することができる。夜になるとランタンに灯りがともるように温かな光を放つガラスブロック越しに階段を上り下りする人の気配がまるで映画のように美しい。