青山のみゆき通り沿い、青南小学校の前に建つにあるFROM 1st(フロム・ファーストビル)は山下和正設計によって1975年に竣工した。まだ、その頃は現在隣に立つ安藤忠雄設計のラ・コレッツィオーネもなかった。ラ・コレッツィオーネが建つ14年も前の話だから、ラ・コレッツィオーネどころかこの通りには何もなかった時代だ。
しかし、今現在はどうだろうか。みゆき通りにはヘルツォーグ&ド・ムーロン設計のプラダ青山やMIUMIUをはじめとして、世界の名だたる建築家が手がけた錚々たる建物が立ち並ぶ目抜き通りとして変貌を遂げた。今や流行の最先端を担う場所のひとつだ。
現在、みゆき通りがこのような場所になったきっかけを作ったのが、フロムファーストビルの存在だ。計画段階ではこんな辺鄙な場所にと揶揄されたらしいが、なんであっても”一番初め”というのはそういうものだ。
フロム・ファーストをプロデュースしたのが、浜野安宏だ。浜野は、デザインプロデューサー、ライフスタイルプロデューサーを名乗っている。最近は映画監督や探検家なども加わり、その活動範囲は広がっているようだ。
浜野は、FROM 1stだけでなく、DIY文化の普及に貢献したあの東急ハンズや、クラマタ階段で有名なデザイン発信基地六本木AXISと雑誌『AXIS』、そして日本有数の観光名所となった渋谷交差点の風景形成にも寄与しているというから驚く。言わば、街の流行を作った人と言えるだろう。
ゆえにFROM 1stと浜野が現在の青山という街に決定的な影響を与えたと言っても過言ではないだろう。
設計は浜野のプロデュースによって山下和正が担当した。