上野駅前に鎮座する巨大なコンクリートの塊のような東京文化会館と向かい合うようにして建っているのは、ル・コルビジェが設計した日本で唯一の建築、国立西洋美術館だ。
国立西洋美術館はル・コルビュジエの建築作品群「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」として2016年に世界文化遺産に登録された17の建築のうちの一つだ。
世界遺産登録されたル・コルビジェの17の建築は、フランス、スイス、ベルギー、ドイツ、アルゼンチン、インド、日本の7カ国に点在している。
ル・コルビュジエが主要な役割を担った「近代建築運動」の象徴とも言えるコルビジェ建築をヨーロッパまで行かなくても電車で訪れることができるのは大変ありがたいことだ。
もちろん、世界遺産登録だけでなく、日本でも2007年に重要文化財(建造物)として国立西洋美術館本館が登録されている。
1959年に竣工した本館の後方には、ル・コルビジェの日本人の弟子として、国立西洋美術館の設計監理も担当した前川國男設計による新館が1979年に建設された。
すなわち国立西洋美術館は、弟子前川國男の手がけた新館と東京文化会館に挟まれているのだ。
また、前庭は1959年の開館以来、様々な改修・改変が行われたために、ユネスコの世界文化遺産に登録された際に、ル・コルビュジエの設計による当初の前庭の設計意図が一部失われているという指摘があった。
そのため、2020年から2022年までの休館期間を経て、前庭を本館開館時の姿、すなわちル・コルビジェの設計に可能な限り戻すリニューアル工事が行われた。
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そのリニューアル工事の際に、外壁周りやコンクリート階段も綺麗になり、鬱蒼と生い茂っていた植栽もすっきりと整理された。
開館時の姿はさすがに知らないが、これが本来のル・コルビジェが設計した美術館の姿なのか!と感慨深いものがあった。
しかし、完全に竣工時のままかというと実はそうでもないらしい。というのも外壁に使われている絶妙なグレーがかった緑系の石、現在この石と全く同じものを入手する事はできず、とってもよく似ている別物なんだとか、そうでないとか。さぁその件についての真偽やいかに?
▼リールでビフォーアフターを比較してみてください。
今は、通行禁止で上り下りすることは叶わない二つの外階段もすっかりきれいになり、手すりが描く流れるような線とささらが見せる絶妙な階段の横顔は、まるでコルビジュジエが描くドローイングのように軽やかで美しい。
また、向かい合って建っている前川國男設計の東京文化会館を背景にしたスロープの直線が行き交う場所も好きなポイントの一つだ。(リール参照)
何度見てもため息が出るような名建築の名階段だ。