八王子にある多摩美術大学の図書館は、あのプリツカー賞受賞建築家の伊東豊雄設計による斬新でかっこいい建築です。
伊東豊雄といえば、このブログでも紹介したドットの螺旋階段が美しい座・高円寺や長い階段のランダムなドットが印象的なまつもと市民芸術館など、代表作の仙台メディアテーク以外にもたくさんの名建築を手掛けています。
また、伊東豊雄事務所出身のOBOGは、西沢立衛とのユニットSANAAでも有名な妹島和世をはじめとして平田晃久、中山英之などがいます。
大躍進を遂げている建築家を多く輩出しているのですね。
いつかきちんとみたいみたいと思いつつ時間が経ってしまいましたが、ようやく図書館の見学に久しぶりの母校を訪問しました。
PR多摩美術大学図書館
設計 多摩美術大学八王子キャンパス設計室+伊東豊雄建築設計事務所+佐々木睦朗構造計画研究所+鹿島建設(設計協力)
竣工 2007年
多摩ニュータウンの最西部に位置する多摩美術大学の八王子キャンパスは、緑豊かな山の中にあります。
私が通学していた頃は、美化していうと現在よりももっと緑が多く、自然豊かな場所でした。
真実を述べると八王子の僻地の誰もいない、何もないひたすらに山奥にある美大でした。
今とは違う場所にあった正門からは、まるで登山のような急勾配の坂道があり、当時は当然だった車通学をしていた私を含めた多くの学生は2速(もちろんミッション)でベタ踏みして上ったものです。(思い出話は永遠に続いてしまうのでこのくらいに)
しかし、現在は私が通学した頃の面影は悲しいくらい残っておらず、計19棟に及ぶ馴染みのない校舎と施設、そして正門から入るとすぐに目にとまる今回の目的地である図書館があります。
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多摩美図書館の外観
この図書館の存在がオシャレすぎて、母校感ゼロ。
おかげで完全に部外者として見学に徹することができました。
▲隣の本部棟というところからの外観です。連続するアーチは、そのアールが統一されているわけではありません。
ランダムなアールを描くアーチ型の開口部は、コンクリートの無機質な箱型建築にリズムを持たせ、ガラスには木々の緑が反射して美しい姿を見せています。
また、壁面は緩く内側にカーブしているのがわかります。
▲アーチ型の開口部は2箇所の出入り口以外は開閉しません。しかし、このガラスの効果で開放的な図書館施設になっています。
勉強に集中するため?2階はカーテンが降りていて内部が見えません。
ああ、こんなにオシャレで長居したくなるような建物があるなんて素直に羨ましい。
図書館は地下1階、地上2階延床面積:5,639m2
出入り口は坂の下と上の2箇所です。
▲緩くカーブした壁面に沿うようにガラスもツライチになっています。ヒェー!す、すごい!
多摩美の図書館のすごいところは、壁面のコンクリートとガラスがツライチなだけではありません。
多摩美のキャンパスの特徴の一つである勾配を内部にそのまま取り込んでいることです。
山をそのまま大学にしてしまった多摩美はそこらじゅう坂だらけなので、そのままそこに図書館を建ててしまったのですね。
斬新ですが、多摩美らしい図書館になったと言っていいでしょう。
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多摩美図書館のオープンスペース
中に入ってみましょう。
開口部のアーチが内部では3次元の柱と形をかえ、坂の上に緩やかなアーチの森を構成していました。
な、なんてオシャレなの!この空間。
かつて灰皿がわりの巨大トマト缶がテーブルに置かれまくっていたイイオのイメージとかけ離れすぎています!(落ち着く場所でした)
とても我が母校とが思えません。
▲特に何かあるわけではない広々とした共用部オープンスペースで、呆然とする卒業生の図。
ここのオープンスペースは、アーケードギャラリーというそうです。
内部に入っても建物の中が水平ではない事への違和感は全くありませんでした。
これは多摩美の坂に慣れている卒業生だからではないはずです。
この座っている椅子も含めて勾配を感じさせないデザインになっています。
▲注目すべきはこのスツールです。なんせ、床が水平ではありませんから、スツールの脚がこのようにゆらゆらと揺れるようになっていて、どこでも自分で水平を保てるようになっています。
黒い丸い椅子も同様ですね。
▲学生はここでコーヒーを飲んだり、語らったりできるようになっています。
夏休み中だったため学生は全くいませんでした。
左の円形のスペースは裏側がトイレになっています。
▲私は高身長なので、もし今も多摩美の学生だったら、写真のようにスツールが一番高い坂下を陣取るでしょうね。
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多摩美図書館の2階
残念ながら図書館のコアな部分は2階にあるようで、見ることはかないませんでした。
どうやら卒業生は、校友会カードを持参すればこの図書館を利用できるようですが、今回は見学だけで十分。
▲カーテンもアーチ模様。ちょっと鱗ぽい。
多摩美の図書館を見学するには
多摩美の図書館は、開館していれば誰でも見学することができます。
ただし、見学できるのは、外観と1階のアーケードギャラリーと呼ばれるオープンスペースのみです。
事前予約の必要もありません。
訪問したら、守衛所に立ち寄り手続きをすれば見学できます。
開館時間などは多摩美術大学図書館のwebで確認してください。
多摩美の図書館の撮影について
多摩美の図書館の写真撮影ですが、オープンスペースの撮影は可能です。
ただし、三脚やフラッシュはNGです。
学生がほとんどいない夏休みや冬休みなどの休みの時の開館時の見学がオススメです。
ある程度想定はしておりましたが、あまりにも変わってしまったので、懐かしい!とか、思い出に浸るとかそいういう感覚は皆無でした。
どこか別の美大を見学したような気分で、ちょっと変な感じでしたが、少子化に向けて多摩美も生徒集めに必死なんだろうなぁと感じずにはいられませんでした。
どうか母校がなくなったりする未来が来ませんように。
伊東豊雄埼玉の建築イイナパーク▼
伊東豊雄埼玉の建築ヤオコー川越美術館▼
基本情報
多摩美術大学 図書館
東京都八王子市鑓水2丁目1723MAP アクセス:JR横浜線・京王相模原線橋本駅北口から神奈川中央交通バス「多摩美術大学行」で約8分、 JR八王子駅南口から京王バスで約20分 |