上野の東京国立博物館は敷地内に5つの建物があり、近接した場所に黒田記念館があるので、6つの展示館で構成されています。これら全てが東京国立博物館です。(以下東博)
入場料を支払って敷地内に入ると、正面に日本ギャラリーを有する東博本館、右側にアジアギャラリーのある東博東洋館、左奥に日本の考古と特別展を開催する東博平成館、左側に特別展と催事を行う東博表慶館、左のさらに奥に法隆寺の宝物を収蔵展示する法隆寺宝物館があります。
どの建築も時代ごとの意匠が施され見応えのある建物です。
そんな東博の建築の中でも、このブログでは各館の個性あふれる階段に注目していきたいと思います。
東博本館は帝冠建築様式で東博の中央に堂々と鎮座する東博の核となる場所です。その階段はすごかった!
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渡辺仁
渡辺仁(1887-1973)は新潟県生まれの建築家で、最も世の中の人に認知されている建築は、東博本館ではなくて銀座の和光かもしれません。1932年竣工当時は和光ではなく服部時計店でした。銀座4丁目の交差点の角に建つ和光は銀座の象徴ともいうべき存在です。
また、アート好き、建築好きには超有名な原美術館こと元原邸は、和光や東博とは違って個人邸なので小規模(と言っても個人邸レベルの中ではかなりの大邸宅でした)な建築でした。
原美術館は個人的に渡辺仁建築では最も訪れた建築だったかもしれません。残念ながらアート好き建築好きが涙して惜しんだものの2021年に閉館、その後解体されてしまったので現在は跡形もありません。
原美術館は東京の美術館の中で最も好きな美術館だっただけに今でも悲しみが癒えません。初訪問は高校1年生16歳の時、私に現代美術を教えてくれた美術館でした。そんな話をアーティストやアート好きの方とすると、上京して初めて行った美術館だったとか、現代美術との初めての出会いが原美術館だったという方が多く、悲しい話なのですが盛り上がります。原美術館は多くの人にとって現代美術の入口としての役目を果たした美術館でした。
東博 本館の外観
渡辺仁の設計で1938年(昭和13年)に開館した本館は、コンクリートの建築に瓦の屋根を載せた帝冠様式の建物です。
▲この本館は二代目の建築で、初代本館はジョサイア・コンドルによる建築でした。しかし、関東大震災によって損壊したため、昭和天皇の即位記念で「日本趣味を基調とした東洋式」という条件でコンペが行われ、渡辺仁が選出されました。2001年には、重要文化財の指定を受けています。
▲本館は、上野駅から向かうと上野公園の噴水越しからもその姿が見えて東博の象徴的な存在です。
▲威厳がある上に屋根の瓦によってとても日本的な佇まいを見せているので、東博の中で外国人観光客から最も人気のある建築かもしれません。展示されているコレクションも縄文時代から江戸時代まで、時代を追って展示する「日本美術の流れ」です。
国宝(89点)や重要文化財(646点)などの名品の数々を間近で見られる貴重な空間でもあります。そのコレクション総数は12万点!当たり前と言えば当たり前なのですが、日本美術の世界最大規模のコレクションを有します。
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東博 本館の階段
訪問したことのない方でも、あれ!?ここ見たことあるな。と感じる方も多いでしょう。というのも数々のテレビドラマなどの撮影が行われているロケ地としても有名な場所なのです。
最も有名なのは倍返し!で一世を風靡したドラマ「半沢直樹」の東京中央銀行として度々登場したのが、東博本館の大階段です。ドラマのロケ地で銀行や裁判所などとして登場していますが、一般の方のウェディングの撮影スポットでもあります。
料金を払えば一般人でも主役となってこの大階段で撮影をすることができます。
それでは、とんでもなく大型の大階段を見てみましょう。
▲現在では、おそらく作れないような凝った大階段です。総大理石の立派な階段は当然ながら、照明やステンドグラス、時計や扉など贅を尽くしたつくりです。昭和天皇の即位記念ですから当然と言えば当然ですが、残念ながら平成や令和にはこのような建築は建っていませんね。
▲大理石の手すりの下には、アイアンワークによる繊細な装飾がなされています。写真撮影ができなかったので写真はありませんが、大階段下にある特別5室の吹き抜け空間にも同様の装飾が施されていました。普段非公開の特別5室で2024年9月23日まで展覧会が開催されているので興味のある方は是非!
▲見るべき階段は大階段だけではありません。サブの階段とはいえ、立派なのです。さすが東博です。大理石の階段はやっぱり存在感が違いますね。
▲こちらもトップライトに向かって上っていく階段です。特に装飾のないシンプルな階段ですが、角がアールになっていて優しい印象を受けます。
PR東博の庭園と茶室
東博は見るべきものが多すぎてなかなか庭園まで行きつかないことが多いのですが、春と秋には出向きたい場所です。
実は東博の庭園には池を中心にして茶室が5棟もあるのをご存知ですか?
▲本館のちょうど裏にある庭園には茶室もあって実は風情のある風景が見られます。写真に写っているのは5棟の茶室の一つ転合庵(てんごうあん)です。
▲本館を庭園側から見た様子です。
真夏は無理ですが、季節の良い時期に庭園でゆっくりするのもありです。
本館で開催中(2024年9月23日まで)企画展▼
基本情報
東京国立博物館 本館
開館時間:9:30~17:00 (金・土曜日は~19:00) 休館日:月曜日 観覧料:総合文化展(平常展)観覧料:一般1,000円、大学生500円 企画展は展覧会により異なる 台東区上野公園13−9 MAP アクセス:JR上野駅公園口または鶯谷駅南口下車徒歩10分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅下車徒歩15分、京成電鉄京成上野駅下車 徒歩15分 |