上野の東京国立博物館は敷地内に5つの建物があり、近接した場所に黒田記念館があるので、6つの展示館で構成されています。これら全てが東京国立博物館です。(以下東博)
入場料を支払って敷地内に入ると、正面に日本ギャラリーを有する東博本館、右側にアジアギャラリーのある東博東洋館、左奥に日本の考古と特別展を開催する東博平成館、左側に特別展と催事を行う東博表慶館、左のさらに奥に法隆寺の宝物を収蔵展示する法隆寺宝物館があります。
どの建築も時代ごとの意匠が施され見応えのある建物です。
そんな東博の建築の中でも、このブログでは各館の個性あふれる階段に注目していきたいと思います。
谷口吉郎設計の東洋館の名建築の名階段に続いて、御子息谷口吉生の法隆寺宝物館の美しすぎる階段に注目します。
谷口吉生
著名建築家の谷口吉郎を父に持ち、丹下健三の都市・建築研究所出身の建築家です。ほぼデビュー作と言ってもいい資生堂アートハウスで日本建築学会賞を受賞し、今回紹介する法隆寺宝物館でも日本建築学会賞を受賞しています。
また、世界的にも超有名な美術館NYのMoMAの新館を手がけたことで世界にも広く知られるようになりました。
あまりメディアに登場することがないのでご本人は秘められた存在ですが、86歳になる巨匠です。2022年9月に放送された新美の巨人たちにインタビュー出演されているのを見ましたが、テレビでその姿を見るのは私は初めてでした。
東博 法隆寺宝物館
1999年、東博平成館と同年に開館した東博の中で最も新しい建築です。
▲四角い箱型の建築ですが、手前には広々とした水盤があり、建築と空と水と木々というこれ以上ない美しいシチュエーションの中に建っています。
東博の中で最も好きな建築で、最も訪問回数の多い場所です。東博にきてここに立ち寄らずに帰ることは少ないです。
季節や時間で全然見え方が違うので、どんなに疲れていても少なくとも外観だけは拝んで帰るようにしています。
東博 法隆寺宝物館の階段
ここは外階段はなく館内の内階段のみです。
▲展示室内の上下移動のための階段です。
壁側の手すりは壁に埋め込まれ、逆側の手すりは気配を消しているけれど機能は果たしています。なんて理知的なデザインなんでしょう。
谷口吉生の設計する美術館(博物館)は、上品で気品に満ち溢れています。その雰囲気が階段に結集しているようです。
▲こちらの階段は、基本的に展示室を鑑賞しおわり最後に降りる階段です。その階段からはルーバー越しに水盤と緑が見えてここが東京であることを忘れさせてくれます。
階段下にまるで作品のように置かれている革の椅子CAB。2脚並んだCABの位置は、きっちり配置場所が決まっています。あの位置でなくてはならないのです。
現在、コロナで休業していたカフェが再開し、カフェ待ちの人用の椅子がCABの辺りまで並んでいるので、写真のような美しい光景が見られないのがちょっと残念です。
東博 法隆寺宝物館の展示室
展示室の整然とした美しさもご紹介します。
▲ガラスケースにきっちりおさまった仏像の数々。こんなにもモダンな見せ方があるんだ!と開館時に見に来た時は本当に感動しました。
ここを見るためだけに(しかも展示デザインを)東博の総合文化展に訪問しても損はないでしょう。
▲ルーバー越しに入るストライプの光も、気品に満ち溢れているのはなぜでしょう。計算され尽くしたルーバーの厚み、ピッチ、素材のせいでしょう。1mm違うだけでこうは見えないという世界です。
東博で最も好きな建築法隆寺宝物館は、どこを切り取っても、どの季節、どの時間に来ても美しいのです。
基本情報
東京国立博物館 法隆寺宝物館
開館時間:9:30~17:00 (金・土曜日は~19:00) 休館日:月曜日 観覧料:総合文化展(平常展)観覧料:一般1,000円、大学生500円 企画展は展覧会により異なる 台東区上野公園13−9 MAP アクセス:JR上野駅公園口または鶯谷駅南口下車徒歩10分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅下車徒歩15分、京成電鉄京成上野駅下車 徒歩15分 |