2026年4月、世界中のデザインの最先端が集まるイタリア・ミラノにて、物質調律家・山崎タクマ氏が新作「Bio-Vide : Becoming Object」を発表します。
このプロジェクトは、世界最大のデザイン展「ミラノサローネ」の若手デザイナーの登竜門である「SaloneSatellite」で公開されます。
会期は2026年4月21日(火)から4月26日(日)まで、イタリア・ミラノのFiera Milano, Rhoが会場です。
物質調律家・山崎タクマの探求
山崎タクマ氏は、35歳以下の若手デザイナーを対象とした「SaloneSatellite」に選出された異色の肩書きを持つ「物質調律家」です。
彼のプロジェクト「Bio-Vide(バイオ・バイド)」は、2014年から10年間続く壮大な探求であり、私たち人間が持つ「生命」と「モノ」に対する認識を根底から揺さぶる挑戦といえます。
山崎氏は、生物学的な定義ではなく、私たちが「生き物らしさ」を感じる心の働きである「有生性(アニマシー)」に注目し、その曖昧で揺らぎのある境界線を探求してきました。
この探求の背景には、獣医師であったお父様の影響があるといいます。
幼少期から、口にする肉が「生命から食べ物へ変換された結果である」という事実を肌で感じてきた経験が、山崎氏の原点になっているそうです。
命の循環、そしてその先の物質への変容を見つめる視点は、まさに「物質調律家」の真骨頂といえるでしょう。
自身を“モノ”として展示する衝撃作
今回ミラノで発表される新作「Bio-Vide : Becoming Object(バイオ・バイド:ビカミング・オブジェクト)」は、この探求をさらに深く、そして衝撃的な方向へと導きます。
山崎氏はこの作品で、これまでの「生命側」からモノを語る視点を反転させ、なんと作家自身が「モノの側」に立つという試みを行います。

▲山崎氏自身が開発した落ち葉の板材で制作された仮面を装着し、「モノ」として空間に配置される姿。
山崎氏自身が開発した落ち葉の板材で制作された、高さ約1.7mの双子の椅子が一脚は展示されます。
その一脚に、山崎氏は自らが落ち葉で構成された仮面を装着し、静かな「モノ」として空間に配置されるのです。
「物の側の感覚を知りたかった」という彼の言葉は、その挑戦の深さを物語っています。
そして、もう一脚の椅子には、生成AIを活用した作品「PromPlant / HeartBeat」が展示されます。
これは、山崎氏自身の心拍データをもとに生成された植物像です。
自身の「身体」、そこから得られる「データ」、そして「物質」である椅子や落ち葉の仮面が鮮やかに対比され、生命とモノ、そしてテクノロジーの関係性を多角的に問いかけます。
世界が注目する展示の詳細

▲落ち葉の模様が施された椅子のようなオブジェ。自然素材のテクスチャが感じられます。
この前衛的な作品は、イタリア・ミラノで開催される世界的なデザインイベントで体験できます。
物質調律家の軌跡と「Industrial Artistry」
山崎タクマ氏は1990年北海道生まれ、多摩美術大学プロダクトデザイン専攻を次席で卒業後、キヤノン株式会社で一眼レフカメラやレンズのデザインを担当しました。
在職中から作品制作を開始し、Lexus Design Award、KOKUYO Design Awardなど、国内外で数々のデザインアワードを受賞しています。
2021年に独立後は、塗装や表面処理の微差まで管理する「インダストリアルデザイン」と、思想や哲学を物語として提示する「芸術」という、異なる領域を横断する活動を展開しています。
この実践の中から、彼独自の概念「Industrial Artistry(インダストリアル・アーティスリー)」を提唱しています。
2025年にはニューヨークのギャラリーと契約し、マンハッタンで個展を開催した実績もあります。
作品がプライベートコレクションに収蔵されるなど、その活動は既に国際的な評価を得ています。
近年は、宇宙船設計やスペースコロニー構想といった地球外環境における人間と物質の関係性にもテーマを広げ、ロボットデザインを中心に多岐にわたる活動を行っています。
プロジェクトを支える匠の技
山崎氏の独創的なビジョンを実現するためには、確かな技術力が不可欠です。
今回のミラノ出展には、二つの強力な企業が技術協力として参加しています。
「ふつか印刷」は、シルクスクリーン印刷技術を核に、手仕事による高品質な仕上がりを追求する印刷会社です。
山崎氏の作品における繊細な表現や素材感の追求に、彼らの技術が貢献しているといえるでしょう。
「SPACEAGENT株式会社」は、航空宇宙部品の加工マネジメントを手掛ける企業です。
樹脂・金属問わず多様な加工技術を宇宙開発に応用し、超難加工にも挑戦する彼らの技術は、未来の宇宙産業を支えています。
今回の作品で、生成AIやデータといった最先端の要素を取り入れる中で、彼らの技術力が山崎氏の表現を物理的に具現化する上で、重要な役割を果たしたと考えられます。
あなたも「モノ」の視点から世界を見てみませんか?
山崎タクマ氏がミラノサローネで発表する「Bio-Vide : Becoming Object」は、単なるデザイン作品ではありません。
それは、私たちが普段意識することのない「モノ」たちの視点から、世界を再認識する機会を与えてくれます。
彼が「モノの側の感覚を知りたかった」と語るように、この展示を通じて得られる経験は、私たちの日常に対する見方をも変えるかもしれません。
生命と物質の境界で揺れ動く知覚。その問いかけは、デザインの領域を超え、哲学的な思索へと私たちを誘います。
基本情報
会期:2026年4月21日(火) – 4月26日(日)
会場:Fiera Milano, Rho (イタリア・ミラノ)
出展部門:SaloneSatellite (35歳以下の若手デザイナー対象部門)
ブース:Pavilion 7 / Booth E35









