子供の頃からその怪しげな眼差しと魅力に取り憑かれた宇野亞喜良の展覧会が銀座のggg(ギンザグラフィックギャラリー)で開幕したので早速足を運んでみました。展覧会タイトルは「万華鏡」。
実験的な新作と1960年代の華麗なるポスターの数々を一堂に見られる贅沢な空間でした。
さらに、それだけではなく60年代の貴重な映像作品まで鑑賞できちゃうんです。
2022年と1960年代の時空を超えた新旧の宇野ワールドにどっぷり浸かれる展覧会です。
新旧と書きましたが、旧の方が全然古くないからまた驚きです。
▲展覧会ポスターのデザインは、大島依提亜によるもの。
PR宇野亞喜良
宇野亞喜良はなんと今年88歳(米寿)を迎えたそうです。
麻布十番に事務所を構えている縁で1999年からずっと麻布十番祭りのポスターのデザインを担当しています。私も麻布十番で何度かご本人を見かけたこともあります。
しかし、宇野亞喜良作品との出会いはもっともっと古く、子供の頃に読んだ今江祥智「海いろの部屋」の本の装丁と挿絵でした。
宇野亞喜良が描く、なんとも言えない不思議な雰囲気を纏ったその少女像の魅力に取り憑かれ、子供心にこの絵はなんだかとんでもなく他の絵本とは違うと感じました。
ですから、今でもその出会いは鮮明に記憶されています。
私のように子供の頃、児童文学で宇野亞喜良と出会ったという人も多いでしょう。
そんな宇野亜喜良作品を観られる展覧会です。
▲宇野亞喜良と書籍の縁の深さを象徴するようなこの作品は、装丁ではなく本の小口に絵が描かれています。
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展覧会構成
gggでの個展は通常通り1階と地階の2会場に分かれています。
▲展覧会会場の構成は、この展覧会の冒頭に宇野亞喜良の評論も寄せている矢萩喜從郎による斬新なデザインです。
この評論の中で触れていたのですが、宇野亞喜良は父親が室内装飾の仕事を、母親は「白薔薇」というカフェを経営していたという環境で育ったというのが妙に納得しました。
俳句と特殊印刷技術
1階では、俳句と少女をテーマにした作品シリーズ約20点が展示されています。
「デザインのひきだし」創刊編集長の津田淳子による特殊印刷設計により、20作品全てが異なる表現方法で印刷されています。
宇野亜喜良の作品であることはもちろんですが、特殊印刷技術の展覧会という側面もあって二重に楽しめる内容です。
というのも、ただ鑑賞するだけではなかなか理解できない印刷技術についても、津田淳子の丁寧な特殊印刷設計に関するコメントが書かれたリーフレットを無料配布していますので、それを読みながら鑑賞できるようになっています。
そして、その親切丁寧なリーフレットのデザインは、会場構成と評論を担当している矢萩喜從郎なんです。マルチな方ですねぇ。
▲宇野亜喜良と俳句と特殊印刷と3つが同時に愉しめるまさにシンクロニシティな展覧会です。
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60年代ポスター
地階会場では、刈谷市美術館全面協力による、1階会場の新作の原点となる宇野亞喜良の1960年代のポスター約50点が展示されています。
▲一番最初に展示されているのは1959年に手がけたポスターです。
この後、炸裂する宇野亞喜良の世界観の着火点となる作品です。
▲1968年のポスターの数々。
これが50年以上も前だっていうから信じられません。
▲そして、なんとピンクフロイドの「狂気」アルバムの販促ポスターまで!
男性を描いているのでそっちの意味でレアです。
地階会場の展示構成も矢萩喜從郎です。白い枠組みにまるでポスターが浮遊しているかのように展示されています。
2会場を見て、いろんな見方ができる展覧会だから「万華鏡」なんだ!と納得しました。
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映像作品
2階のライブラリでは、宇野亜喜良が制作した3つの映像作品が観られます。
映像の時間は3本で25分なので全部鑑賞しておきたいです。
特に、人体に描かれた動物や少女が動く作品「お前とわたし」(1965年)は、アナログな手法だけれども、その斬新さに度肝を抜かれました。
世界観が溢れすぎててすごい!の一言。
作品は他に「La Fate Blance(白い祭り)」(1964年)、「午砲(ドン」(1964年)がループで流れています。
「最近になって宇野は、自分と時代の波長が再び合ってきたことを実感」(ggg HP展覧会情報より引用)とありますが、時代の流れというよりも普遍的なものだったんだのではないでしょうか。
特殊印刷を使った最新作、60年代のポスターの数々、そして斬新な映像作品とシンクロニシティで濃厚な展覧会です。
銀座へ行ったら観ておきたい展覧会のひとつです。
基本情報
2022年12月09日(金)~01月31日(火) 11:00 – 19:00 日祝休、2022年12/28~2023年1/5 入場無料 ggg(ギンザグラフィックギャラリー) 中央区銀座7丁目7−2 DNP 銀座ビル 1F MAP |