リンダー・スターリング《LINDER: GODDESS OF THE MIND》
今年2026年の京都Graphieで日本では初めとなる個展が開催され、注目と人気を集めたリンダー・スターリングの《LINDER: GODDESS OF THE MIND》展が東京に巡回してきた。会場は銀座のシャネル・ネクサス・ホール。
わざわざ京都まで行くのはと躊躇っていた関東圏のファンにとっては待望の巡回展だろう。
さて、リンダー・スターリングだがリリースなどでは ”パンクシーンから登場したアーティスト” くらいの紹介で具体的に何をしたのかほとんど紹介されていない。要するに何も言っていないに等しいので、音楽シーンで何をしていたか詳しく紹介しよう。
▲Linder名義で良く知られるのが「バズコックス(Buzzcocks)」のデビューシングル「Orgasm Addict」のアートワークだ。日本ではリアルタイムに聴けることはほとんど無かったが、パンクの衝動をそのまま歌にしたパンクアンセムの一つだ。
女性の裸体にアイロンなどをコラージュしたこの作品を上下逆さまにして色を変えるとそのままOrgasm Addictのジャケットになる。このジャケット・デザインはリンダー・スターリングが世に知られるきっかけとなる。その後バズコックス人脈のアート指向なNew Waveバンド「Magazine」のジャケット・デザインなども手掛ける。要するにハワード・デヴォートの関係が強かったということだろう。
その後、90年代には元スミスの「モリッシー(Morrissey)」のアルバム・ジャケットを担当し、日本ツアーに同行したこともあったそうだ。
そして自身の活動としてはポストパンクなバンド「Ludus」のリーダー・ボーカルとしての活動も行っている。モリッシーがLudusのファンだったことからその後の交友に繋がったそうだ。
LudusはPop GroupやRip Rig & Panic、あるいはAu Pairsなど、フリージャズや黒人音楽からの影響を感じさせる硬質でポスト・パンクなバンドたちに似たサウンドなので中古盤屋などで見かけたらとにかく購入しておくのを勧める。
▲リンダーの写真作品の核にあるのは、フォトモンタージュという手法を使った女性の身体と消費社会への批評だ。
▲女性誌の広告から切り抜かれたイメージ、食べ物、家電、そして女性の身体——それらを解体し、再配置することで、「女性はこうあるべき」という視線そのものを暴く。
▲Ludusのデビューカセット「Pickpocket」に封入されていたカードに使われていたブックレット。リンダー・スターリングの作品として展示されているが、もとともはカセットのおまけだったものだ。テキストはLudusの曲の歌詞である。
▲ま会場のモニターでは彼女のインタビュー映像が上映されている。の中にはLudusがマンチェスターのハシエンダと思われる場所で行ったライブ映像が含まれている。これまた貴重なもので今まで日本で見ることができなかったものなので、訪問時にはきちんと全編を観ておきたい。
「1977年にパンクは終わっていた」など当事者ならではの貴重な証言を聞くことができる。
同じインタビューの中で彼女が明かしていたのだが、Ludusでのライブでは女性の身体にまつわる社会的タブーをそのままハシエンダのステージの上にぶちまけたこともあるのだという。
同時代のコージー・ファニ・トゥッティ(Throbbing Gristle(が、1976年のICA展示「Prostitution」で女性の身体と性産業を主題にした展示を行い、メディアと議会を巻き込む騒動を引き起こしたことを思い出させるエピソードだ。
70年代後半、フェミニズムが「女性はこう生きるべき」というメインストリームとは別の規範を提示しようとした時代に、リンダーやコージーは規範そのものを解体しようとしていた。彼女たちの作品はそうしたラジカルな立場からのものなのだ。
▲シャネルでのキービジュアルは京都会場と同じもの。
Ludusのデビューカセット「Pickpocket」に封入されていたカードに使われていた写真である。
1977年のバズコックス、1981年のLudusという音楽シーンでの活動がり、パンクは1977年に終わっていたという諦念からか写真を使ったアーティストしての活動を続けてきたリンダー・スターリング。その日本での最初の個展のビジュアルが再びLudusというのは音楽ファンとしてはなんとも感慨深い。
▲京都で見たからなぁという人のために、新作も用意されている。
京都グラフィーからのわずかな時間で新作を制作するバイタリティには驚嘆するばかり。京都グラフィーで既に見た人も、リンダー・スターリングを知りたい人も会場に足を運んでもらいたい。
| リンダー・スターリング 《LINDER: GODDESS OF THE MIND》
会期:2026年6月25日(木) 〜 8月16日(日) 会期中無休 会場:シャネル・ネクサス・ホール 開館時間:11:00 – 19:00 入場料:無料、予約不要 |
















