遠野、神戸のこどもの森図書館や直島のベネッセハウスの新しい施設ヴァレーギャラリーなど近年も話題に事欠かない建築界の生ける伝説安藤忠雄の最新建築です。2022年4月、京都鍵屋町の旧任天堂本社ビルが安藤忠雄設計監修のもとホテルとして生まれ変わった丸福樓が大変に話題になりました。
しかし、実はもう1つ竣工した安藤忠雄建築があります。2022年4月末に竣工したばかりのまさに出来立てのほやほや、最新の安藤忠雄建築は、とっても安藤忠雄らしいコンクリート打放しで、コンパクトながらも地上3階地下1階の4フロアのオフィスビルです。
PR工事中
それは、単なる偶然でした。昨年近所でよく通る道沿いで工事が始まり、その仮囲いに「安藤忠雄建築研究所」の文字を発見しました。それからは、通りがかる度に様子を窺いつつ仮囲いが取れるのを楽しみにしていました。
そして、近所にもかかわらずここに元々何があったのか朧げな記憶しかありません。
新しいものが建ったり、工事が始まったりしても、以前そこに何があったのか大抵は思い出せないのですけれど。記憶にないということは、普通の小規模なビルだったのだと思われます。
全貌が明らかに
そして、ツツジが綺麗に咲く4月のある日、その姿を現しました。まだ仮囲いがはずれたばかりで、引き渡し前の最新安藤忠雄建築の様子です。
施工業者の方々と思われる人々が、忙しなく出たり入ったりしていました。まだ、工事車両が駐車しているし、コーンも立っています。▼
全方位
大通り沿いのY字路の中心に建つオフィスビルです。右側の道は大通りですが、左側の道は細い小道です。
シャープなコンクリートの塊に大きな三角形の窓と長方形の窓がポイントです。
敷地いっぱいに四角の建物が建っています。この角度からが正面でしょうね。▼
対面からの様子です。まだ、お施主さんは引越してきていません。▼
裏側からの様子です。一応こちらにも長方形の窓。天井はかなり傾斜しています。▼
なかなかの裏感▼
入り口側2階に小さな三角窓があります。心憎い演出です。その隣のドアは完全にトマソンですが、避難口でしょうか。
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定点観測
光の綺麗なある日の様子。打放しのコンクリートが綺麗です。
だいぶ前に聞いた話ですが、安藤さんが現場に来る前の日には、現場の人達がコンクリートを濡れた布で綺麗に拭いた後、更に磨きあげるんだとか。ここも拭いて、磨いたのかな?▼
ある日の夕暮れ。家具が入ってるようです。▼
内観は窓からしか見られませんが、こんな感じです。▼
安藤忠雄と言えば、近年は大きなプロジェクトも多々手がけられていますが、やっぱり原点である住吉の長屋や光の教会が想起されます。光が美しいコンパクトなコンクリート空間は、安藤忠雄の真骨頂でしょう。
きっとこのビルも東南に向いた三層を貫く三角形の大きな窓からの光が美しいに違いありません。
ああ、中からその様子を見てみたい。
お施主さんである会社が引っ越しを完了し、稼働開始しました。1階、地下はロールスクリーンが下されています。▼
PRオフィス
前述したように用途はオフィスビルです。どんな会社が入ってるかというと、島崎保彦さんというコピーライターでありイベントプロデューサーが1964年に創立した広告会社シマ・クリエイティブハウスの事務所です。社員数も20人満たない少数精鋭の会社なので、4フロアあれば十分だと思われます。
この島崎保彦さんというのは、「おみそなぁら、ハナマルキ♪」(ハナマルキ)、や「お〜い、お茶♪」(伊藤園)といった、コピーに代表される方です。
残念ながら、ご本人はこの新しいオフィスビルの竣工を見ることなく2019年に亡くられています。
映像公開
シマ・クリエイティブハウスの会社のHPで新社屋の映像が公開されました。(2022年5月27日)
内部の様子もあるので、中からの三角窓の見え方や、美しすぎる階段、そして、外からは気づかなかった屋上バルコニーの様子など簡潔に美しくまとまった映像です。見どころ満載!必見です!
その場所
駒沢通り沿いで六本木通りにぶつかる前の坂道の途中です。渋谷区東・広尾と港区南青山の境界近くで常陸宮邸がそばにあります。
最寄駅は渋谷、表参道、恵比寿、広尾、どこからも10分またはそれ以上かかります。最寄りの駅が近くにないため地元の人しか通らない静かな場所でもあります。
広尾界隈の建築巡りの参考に▼
東京都内建築巡り<広尾その1渋谷区広尾編>安藤忠雄に竹山実、丹下健三、槇文彦、隈研吾、青木淳、伊東豊雄 実は巨匠の建築がいっぱい
基本情報
東京都港区南青山7-2-8 MAP