没後50年を迎える画家、堂本印象(どうもといんしょう、1891-1975)の特別企画展「モダンなときめき―智積院襖絵の魅力―」が、京都府立堂本印象美術館にて開催されます。会期は2026年1月20日(火)から3月22日(日)までです。
この展覧会では、印象が手掛けた智積院(ちしゃくいん)の襖絵18面が、通常非公開であるにもかかわらず一挙に公開される点が特筆すべきポイントといえるでしょう。
堂本印象と智積院襖絵の挑戦
伝統の都、京都において革新を追求した堂本印象は、「百年ぐらいは悪口を言われるだろう」とまで語った画家です。彼の没後50年を記念する本展は、その挑戦的な創作姿勢と、そこに込められた知られざる想いに光を当てます。
本企画展は京都府および京都府立堂本印象美術館が主催し、総本山智積院が特別協力しています。

▲特別企画展「モダンなときめき―智積院襖絵の魅力―」のポスター。中央に描かれた《婦女喫茶図》が、伝統的な襖絵に現代的な要素を導入した印象の革新性を示しています。
印象は生涯にわたり、全国13カ所の社寺で襖絵を制作しました。中でも智積院の襖絵は、その異彩を放つ存在として知られています。
常識を打ち破る《婦女喫茶図》
昭和33年(1958年)、智積院に再建された宸殿を飾るべく、印象は襖絵の制作を依頼されました。智積院は、長谷川等伯(はせがわとうはく)父子による国宝《楓図》《桜図》が鎮座する日本美術の聖地です。そのような場所で印象が選んだ題材は、なんと野点(のだて)をする現代女性でした。

▲《婦女喫茶図》昭和33年(1958) 智積院蔵。寺院の襖絵としては異例の、野点を楽しむ現代女性を描いた作品です。金地の背景に描かれた月や桜の意匠が、伝統とモダンの融合を象徴しています。
寺院の襖絵といえば、山水画や花鳥画、あるいは仏教画が一般的です。その中で、まるでファッション雑誌のワンシーンのような現代女性のティータイムを描くという発想は、当時の常識を打ち破る型破りなものでした。印象は「宗教活動は時勢と無縁であってはならない」という寺の要望に応えつつも、自らの芸術家としての信念を貫いたといわれています。今回の企画展では、この革新的な襖絵18面を特別に鑑賞できる貴重な機会です。
国宝への「対抗」と茶道具の魅力
本展では、長谷川等伯父子の国宝《桜楓図》に対抗するかのように描かれた《松桜柳図》も展示されます。伝統を重んじる智積院という場で、「対抗」という言葉を使うほどの気概は、印象が伝統を模倣するだけでなく、新たな時代に即した美を創造しようとした強い意志の表れといえるでしょう。

▲《松桜柳図》昭和33年(1958) 智積院蔵。長谷川等伯の国宝《桜楓図》への「対抗」として描かれ、抽象的ながら力強い筆致で新たな美の創造を目指した印象の気概が感じられます。
堂本印象の魅力は、絵画だけにとどまりません。彼は「数寄者(すきしゃ)」であった父の影響で茶の湯に親しみ、自邸に茶室をしつらえるほどでした。今回の企画展では、茶道具までも自ら制作していた印象の独創的なデザインの茶道具にも注目が集まります。新収蔵品の茶杓《アビニオン》をはじめ、茶碗《雨もまたよし》や茶入《豊穣》など、その多才ぶりに驚かされることでしょう。

▲茶碗《雨もまたよし》昭和39年(1964)。白地の陶器に青、緑、黄色の鮮やかな色彩と大胆な筆致で抽象的な模様が描かれており、印象のモダンな感性が茶道具にも表現されています。

▲茶入《豊穣》、茶杓《アビニオン》昭和38年(1963)。木樽を模した茶入と、葡萄のモチーフが施された茶杓は、伝統的な茶道具に独創的なデザインを取り入れた印象の多才さを示しています。
多彩な「モダンなときめき」作品
印象は、伝統的な日本画の枠にとらわれず、様々な「モダン」な作品を残しています。本企画展では、美術館の職員が選んだ「ときめく」作品も多数展示される予定です。

▲《モンマルトルのバー》昭和27年(1952)。パリの街角を描いたこの作品は、印象が日本画の枠を超え、西洋の風俗画にも挑戦した表現の幅広さを示しています。

▲《聖歌》昭和44年(1969)。様々な色と形、楽譜や文字が複雑に組み合わされた抽象画は、印象晩年の作品に見られる自由な表現と探求心を象徴しています。
カラフルな抽象画や、パリの街角を描いたような現代風俗画など、彼の表現の幅広さには目を見張るばかりです。それぞれの作品から、見る人の心を捉える「ときめき」が伝わってくることでしょう。
関連イベント情報
展覧会をさらに深く楽しむための関連イベントも開催されます。
ギャラリートーク
- 日時:2026年2月7日(土)、3月7日(土) いずれも14:00より
- 会場:2階展示室
- 参加費・申込:不要 (要観覧券)
シンポジウム
『いの字絵本 恋の都大阪の巻』復刊・復刻を記念し、シンポジウムが開催されます。
- 日時:2026年2月1日(日) 13:30~15:30 (開場 13:00~)
- 場所:住まい情報センタービル 3階ホール (大阪市北区天神橋6丁目4-20)
- 定員:150名 [無料/要申込]
- 申込受付:2025年12月12日(金)より開始予定。詳細は美術館ホームページをご確認ください。
基本情報
会期:2026年1月20日(火) – 3月22日(日)
開館時間:9:30~17:00 (入館は16:30まで)
休館日:月曜日 (月曜日が祝休日の場合は翌平日休館)
料金:一般 800円 (団体640円) / 高大生 500円 (団体400円) / 65歳以上 400円 (団体320円、要公的証明書) / 中学生以下および障害者手帳をご提示の方 (介護者1名を含む) は無料
会場:京都府立堂本印象美術館
住所:〒603-8355 京都市北区平野上柳町26-3
アクセス:公式サイトをご確認ください
公式サイト:https://insho-domoto.com/









