青山にあるラ・コレッツィオーネは、ファサードから受ける印象と中に入った時のスケール感が全く異なる不思議建築だ。山下和正設計の名建築フロムファーストの隣に建つ80年代の安藤忠雄建築である。
「ラ・コレッツィオーネ」は鉄骨鉄筋コンクリート造、地下3階・地上4階建て、延べ面積約5,700㎡で、共同住宅も含む複合商業施設として1989年(平成元年)に竣工した。
現在も住宅として実際にここに居住している人がいるのかどうかは不明だが、店舗の他に事務所スペースやレンタルスペースなどがある。
驚くのは、B1階にセントラルフィットネスクラブ24南青山というスポーツクラブが入っている事だ。ただのスポーツクラブなら少々狭い場所でも何台かのマシンを置いて開業可能だろう。しかし、ここはプールまであるらしい。あるらしいというのは、時折スイミングスクール帰りとみられる小学生達が出入りしているのを見かけるからだ。中にはバスタオルを肩にかけ、髪がまだびしょびしょの子供までいる。このあたりではスイミングスクールが希少なのか、結構人気があるようで、頻繁に出入りしているのを目にする。
子供達が通うということは、それなりの広さを占有していると想像に難くない。外側からは、プールのあるスポーツクラブまで内包しているようには、全く見えない。これも地下に大空間を持つ建築が特徴のひとつでもある安藤忠雄マジックだろう。
驚くのは、スポーツクラブだけではない。共用部にある地下からの吹き抜けの大空間にある大階段の存在だ。階段はその大階段だけではない。至る所に階段が張り巡らされていると言っても過言ではない。1度や2度の訪問では全くその全貌をつかむことができない。迷路のような建築だ。その迷路空間には、吹き抜けや幾つもの階段、ブリッジなどが設られている。
安藤忠雄建築マニアなら喜んで迷い込みたくなる空間だ。もちろん、壁面はコンクリート打ち放し。大きなコンクリートの壁に挟まれ、目先の階段しか視界に入らないクレバスのような階段空間もある。
建物が面している通りは車の行き来が激しいが、その騒がしさを忘れさせてくれる静謐ささえ持ち合わせている。小さいようで広く大きいし、エントランスからは、内部はとても暗いように見えるが、その印象に反して内部は地下でも陽の光が入るように工夫されている。いろんなギャップ萌えが繰り広げられている安藤建築である。
この建築には名階段がありすぎて、ひとつに絞れないという嬉しい悩みも含めて名建築の名階段だ。