東新宿の職安通り沿いに聳え立つ軍艦のような建築をご存知でしょうか?
軍艦ビルとか軍艦マンションと呼ばれています。
前を通った事のある人ならその異様な雰囲気を放つ強烈な個性の建築に気づくはずです。
軍艦のようなこのビルの正体は地上14階建ての「GUNKAN東新宿ビル」です。

”軍艦ビル” というと浜松町にも同じ通称で呼ばれる有名なビルがあります(かつてダイエー本社が入っていました)。でもこちらの ”軍艦ビル” の方が先に竣工しています。
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GUNKAN東新宿ビル
異端の建築家、渡邊洋治の設計で1970年に竣工した地下1階、地上14階のマンションです。
すでに解体されてしまった黒川紀章設計の中銀カプセルタワービルのように複数の居室のユニットによって構成されています。
竣工時は第3スカイビルという名称でしたが、後にニュースカイビルに改称されました。
渡邊洋治は第2スカイビルと第5スカイビルの設計を担当しています。第5スカイビルはすでに現存しませんが、第2スカイビルは今でも現役のビルです。
1階には西沢立衛設計のYUBUNEが入っているので立ち寄ったことがある人もいるでしょう。
2011年フルリノベーションが行われ通称だった「軍艦」をビル名に取り入れ「GUNKAN東新宿」として再生しました。
その際にシェアハウス、SOHO、オフィスで構成され、つい最近までリアル脱出ゲーム東新宿店などがテナントとして入っていました。

▲その姿は職安通りからだと細長いちょっと変わったファサードのビルという感じですが、軍艦ビルの軍艦たる部分があまり近くだとよくわかりません。
軍艦ビルの軍艦ぽさは少し離れたところが眺めた方がよくわかります。
今でこそ、周りにも同様の高さのビルが建っていますが、このビルが竣工した1970年の東新宿では、相当に目立っていたでしょう。当時は大江戸線などありませんから、新大久保か新宿が最寄駅ですね。
現在のグリーンがかった色味は2011年のリノベーションの際に塗り替えられたものです。
2011年のリノベーション前の様子は、写真でしか見てませんが幽霊船というか廃墟というか、かなり老朽化が激しく、ちょっと怖い感じでした。
軍艦ビルは解体される?
2011年にビルオーナーが代わりフルリノベーションが行われたものの、現在はほぼ全てのテナントが出ていて空ビルになっています。
2024年に解体予定という事ですが、誰の手によって2024年のいつから解体されるのかなど詳細はよくわかっていません。
よくわからないというより、おそらくちゃんと決まっていないのでしょう。
ただ、軍艦マンションの勇姿が見られるのもそう長くはなさそうです。
でも、まだ解体が始まっているわけではないので、もしかしたらの一縷の望みを捨てきれません。

建築家 渡邊洋治
「狂気の建築家」とか「異端の建築家」と称される渡邊洋治は新潟県出身で、元陸軍船舶兵です。
安藤忠雄ではありませんが大学には通っていません。
早稲田大学の吉阪隆正研究室で助手を務めていたこともあり、吉阪隆正の代表作と言われるヴィラクウクウの初期の図面は渡邊洋治がひいたそうです。
あんまり吉阪隆正とかそのさらに師であるル・コルビュジエの影響を感じる建築ではありませんが、なんと!軍艦ビルの最上部の屋上エリアには、コルビュジエを感じる意匠がありました。
やっぱり少なからず影響はあるようです。しかし、コルビュジエがこの軍艦マンションを見たらなんと言うのでしょうか。聞いて見たいような聞きたくないような。

渡邊洋治は、とにかく建築以外の事は何もしない。結婚しない理由は建築に没頭できないからだとか。
歯も磨かないなど極端な逸話がいろいろあるようですが、それだけ建築に対して一途だったという事でしょう。
しかし、一途な思いを形にする渡邉洋治の実力もすごいのですが、このようなビルの建設を1970年当時に了承した施主もすごいですね。
今後、本当に2024年に解体されてしまうのか、このビルの行方を見守りたいと思います。
基本情報
GUNKAN 東新宿(旧第3スカイビル、旧ニュースカイビル、通称軍艦ビル、軍艦マンション)
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